「このカテゴリーに新しいクルマが導入されることは非常にエキサイティングだ。これはチャンピオンシップの成長と同時に、ヒョンデなどメーカーとの強固な関連性をも示している」と、初代王者ブラウンからHMOのエースを継承したバカン。
「カート時代からキャリアを通じて、まったくの新型モデルをドライブしたことがないから、この機会を与えられたことは非常に特別だ。加えて、このバサーストで初めてi30セダン N TCRを試すことは驚異的であり、真の特権だね」と続けたバカン。
「周回数が非常に少ない状態でバサーストに向かうことは理想的とは言い難いが、ハッチバックの形ですでに複数の勝利を収めて成功しているクルマが証明するとおり、セダンでもあのトラックにフィットすると確信している。いずれにせよ、来季に向けマシンの理解を深めるのは素晴らしいこと。そうすれば、2023年の完全なタイトル獲得に向け有利なスタートを切ることができる!」
こうして全19台が集結したイベントは、ヒョンデのスウィーニーがポールポジションを奪取してレース1のスタートを切ると、順調にリードを維持して周回を重ねていく。しかしサーキット施設内でカンガルーが発見されたため、12周目にセーフティカー(SC)が導入される。
無事に安全確保が確認され3周後にレースが再開されると、今季序盤戦からスピードを披露するジェイ・ハンソン(AWC MPCレーシング/アウディRS3 LMS 2)がヒョンデの背後へと迫る。
しかしハンソンは17周目の“ザ・カッティング”で壁にヒットし、前回のバサースト同様にここでリタイア。自らチャンスを潰したアウディにも助けられ、スウィーニーは2位ディラン・オキーフ(ギャリー・ロジャース・モータースポーツ/プジョー308 TCR)を挟み、3位に続いた僚友ネイサン・マルコム(HMOカスタマー・レーシング/ヒョンデi30 N TCR)とともに、表彰台の真ん中に登壇する結果となった。
一方でランキング2位だったGRMのコックスは、残り2周でルーク・キング(ダッシュスポーツ/ヒョンデi30 N TCR)と絡み、レース後にペナルティを受け総合ランク3位へと陥落。ブラウンにタイトル追撃の1番手を明け渡すことに。
そしてシーズン最終日の日曜は、午前から大雨に濡れ濃い霧の状態に見舞われ、数周のSC先導の後に遅れてレース2のキャンセルが発表される事態に。気象条件が改善したレース3ではオキーフがリードを奪ったものの、ミスを犯して“グリフィンズ・ベンド”でタイヤバリアに接触。アーロン・キャメロン(プジョースポールGRMチーム・バルボリン/プジョー308 TCR)がリードを引き継いでいく。
ベン・バルグワナ(バーソンオートパーツ・レーシング/プジョー308 TCR)のストップでふたたびSCが出動し、リスタート後にはスウィーニー対ブラウンの一騎打ちとなり、最終ラップでチャンピオンの意地を見せたブラウンが大逆転のトップチェッカー。2位にスウィーニーが続き、新型i30セダン投入のバカンが最後の表彰台を獲得した。
そしてタイトル獲得のため「トップ12維持」を掲げたダルベルトは、11位で完走を果たして711ポイントまで伸ばし、最終的に702ポイントまで躍進したブラウンを辛くも抑え、見事に初タイトルを決めてみせた。
「明らかに新しいマシンは僕らより優れていた。ジェイ(ハンソン)は第2世代のアウディで絶対的な速さを示し続け、間違いなくシーズン最速のパッケージだったからね」と、ビハインドを背負いながらの戴冠だったと強調するダルベルト。
「新しいホンダ(量産型11代目シビック)については本当に良い仕上がりだと聞いている。新しいタイプRに関する情報は、発売が近づくにつれて伝えられるだろう。願わくばシーズン当初に間に合わないとしても、可能な限り早いうちに新型TCRの姿を見てみたいね」


