「スペアパーツがないから絶対にぶつけられなかった」(小林可夢偉)

「意外に普通に走れました。そして、普通に走っている自分が怖かった。恐らく、焦らずにできたのが一番良かったんじゃないですか」

 2年ぶりの公式予選を15位で終えた可夢偉はそう振り返ったが、それは端から見てるほど楽な状況ではなかった。

 前日、燃料系に発生したトラブルはパワーユニットの各パーツにダメージを与えていたため、かなり大掛かりな手当を必要とした。当然、優先されるべき仕事はその修復となり、セットアップ作業は手がつけられなかったからである。

 土曜日のフリー走行3回目は、トラブルが再発せずに周回を重ねていたものの、可夢偉のマシンは「テストからほとんど変わっていない」ドライバビリティが低い発展途上のマシンだった。さらにセッティング変更が容易ではないため、まったくセットアップせずに予選に臨む。「軽い燃料で走るのは、今日が初めてだったし、2年ぶりの予選なので」という可夢偉だったが、Q1を16番手で突破する。

 雨が一時的に止んだQ2は多くのドライバーがインターミディエイトでタイムを上げていくのに対して、可夢偉はフルウエットタイヤを選択。ペースを上げられずにいた。

「だって、僕らにはフロントウイングのスペアがないから、慎重に行くしかないでしょ。雨も降っているから、縁石にも乗らないようにしていました」

 それは、ウインターテストで十分なテストができていないこの若いチームには、今は目先の結果よりも、できるだけ多くの周回を重ねて、データを持ち帰ることのほうが大切だという自覚があるからだ。だから、レースに向けて抱負を尋ねられた可夢偉は、言った。

「ピットストップの練習も1回もしていないし、ホンマこれでレースに出られるのかってという不安もあるんですけど、落ち着いて、まずは距離を稼ぎたい。雨が降ったら有利になるとか、ドライの方が良いとか、そんなことはどうでもいい。まずは走り切って、今後につながるデータをしっかり持って帰ること。だから、何が何でも走りきります、絶対に」

 チェッカーフラッグが振られたとき、可夢偉がコース上にとどまっていられるか? 日曜日、可夢偉のレースの焦点はその一点に尽きる。

■GP直送:
日本人F1ジャーナリストの尾張正博氏がグランプリの現場から、ドライバーやチーム首脳の生の声、パドックを賑わせているニュースの真相、レースのキーポイントやサイドストーリーなどを自身の取材情報からお届けする。2013年はGPインサイドとしてお届けしていた

本日のレースクイーン

根岸しおりねぎししおり
2026年 / スーパー耐久
FCR58 GIRL
  • auto sport ch by autosport web

    SUPER GT PARADE LAP EP.1 Produced by autosport web

    禁断のGT500スワップ企画!?
    プレリュードのコクピットを千代勝正と坪井翔がチェック!

  • auto sport

    auto sport 2026年10月号 No.1624

    フォーミュラ一騎打ち
    勝負の最後はやっぱり『人間』

  • asweb shop

    F速 Premium Vol.3
    角田裕毅 現在・過去・未来

    2,100円