8月9日にツインリンクもてぎで行われた2009ARTAカップレースで自らドライブ、リタイアするまで次々と前走車をパスした鈴木亜久里ARTAプロジェクトプロデューサーに、威勢のいい若手ドライバーをパスをするその方法を直撃取材した。
18周で行われるARTAカップの大トリとなるFS125クラス。このクラスは優勝賞金40万円と多くの選手が「勝つ!」と気合いの入る大激戦となっていた。
この決勝レースで最後尾スタートから、現役トップカーターや現在はフォーミュラへとステップアップしたOBなどの“今が旬のドライバー”達を次々とパスしレース折り返しあたりでは中団にまで、亜久里はポジションをアップしていた。ところが、レースも残り4周で突然ピットイン、惜しくもリタイアとなってしまった。
「去年のこのレースから1度も練習していないから体力的に限界だったよ。練習をしていれば走りきれたかもしれない。でも、(リタイアするまでは)がんばってたでしょ?」と、リタイアは残念ながらも久々のカートレースを目一杯楽しんだような亜久里の笑顔だった。
「このレースに出ているのはみんな実力のある選手ばかり、これはARTAカップが始まった12年前から変わらない。毎年ハイレベルなレースが行われてきた」と亜久里が言う強敵を、年上でかつ練習をしていないにも関わらず、面白いくらいパッシングをできる理由を聞くと“体が勝手にパスしている”のだという。
「うまくパスする時というのは、体が勝手に動いているんだ。経験に基づいているわけだけど、頭で考えているのではなくて、その状況で瞬時にパスをしかけていく感じ」。カートからキャリアをスタートさせ様々なフォーミュラで戦い、F1でも世界を相手に激しいバトルを繰り返してきた亜久里は、おそらく何千、何万もの競り合いをしてきたはず。
こうしたひとつひとつの勝負での経験が、次の勝負のためのアイテムであったり、技の引き出しとなって、バトルを有利なものとしている、とその話から感じた。“勝負感”はやはり、実戦を通してしか得られないものだということだ。