2014年シーズンのGP2シリーズにカンポス・レーシングから今季から参戦している佐藤公哉は、第3大会モンテカルロのレース1で15位、レース2で14位となった。決勝レース2終了をジリジリとしながら待っていたマネジメントチーム兼レーシングチームであるユーロノバ・レーシングのオーナー、“タキ井上”こと井上隆智穂は、マシンに乗り込んだままF1のピットからGP2の車検場へ戻り、体重測定を終えた佐藤公哉を見つけると声を掛けた。

 手早く着替えを済ませ荷物をまとめた公哉は、タキとともにモナコ海洋博物館の地下2階駐車場から地下6階駐車場へ、エレベーターの中で日本人ジャーナリストの取材を受けつつ早足で向かった。実は、タキと公哉には“もうひとつのレース”が待っていた。

●モナコは渋滞を抜けるまでがレース
井上隆千穂(以下タキ):公哉くーん、早く早く!
佐藤公哉(以下公哉):はい。すぐ着替えます!
公哉:いやー、間に合いますかね?
タキ:高速道路に乗ったら、コートダジュール空港までは15分で行けるから。
公哉:あと2時間ですか……。
タキ:搭乗手続きがあるから、正確にはあと1時間だな!
公哉:……(汗)。もし間に合わなかったら、チームのバンでメカニックたちと一緒に帰ります。
タキ:でも、バレンシアに着くのは夜中になるよ。
公哉:仕方ありません……。
タキ:まず、この駐車場の出口がいつ開くかだな。F1のピットからここまでは一時的に一方通行になっているから、GP2チームのスタッフが機材と一緒に戻ってくるのを待たなきゃいけない。それとモンテカルロ市街が問題だな。幹線道路へ出るまで、必ず200メートルくらいは渋滞する。
公哉:さすがタキさん、地元だけによくご存知ですね。
タキ:ところで、飛行機は何時なの?
公哉:えー、午後7時25分です。
タキ:え? 午後7時30分じゃなくて? 聞いてないよー。さすがに5分は大きいな……。お、動き始めた。あとは市街の渋滞だな。
公哉:それにしてもたくさんのお客さんですね。
タキ:うん。日本人観光客も居るな。あれ? 意外に渋滞してない。これならたぶん間に合うよ。
公哉:良かったー。

●呑む前に飲む! 呑んだ後に飲む!
公哉:ところでタキさん、今回もたいへんお世話になりました。コースサイドのアパートからは素晴らしい景色を見せてもらいましたし、日本のフォトグラファーさんやジャーナリストさんとの会食はとても楽しかったです。ありがとうございます。
タキ:それも僕の仕事だからな!
公哉:あと、牛丼もご馳走になりましたし、夏野菜カレーの差し入れもありがたかったです。
タキ:それも僕の仕事だからな!
公哉:しかし、チームスタッフとの会食ではさすがに呑み過ぎました。
タキ:GP2でそれじゃあダメよー。F1へ行ったら、それこそスポンサーさんが列をなして、ドライバーのために会食を用意しているんだよ。モナコGPともなれば一晩に4、5軒のハシゴは普通だからな。
公哉:マジですか? 身体がもちませんよ。
タキ:ウソじゃないよ。(ルイス)ハミルトンだって、(ジェンソン)バトンだって、(キミ)ライコネンだって、みんなそうだよ。そこでスポンサーさんとさんざん呑みまくるのよ。
公哉:えー、ライコネンだけは想像つきますが……(汗)。
タキ:F1ドライバーは肉体の基礎代謝がすごいから、いくら呑んでも平気なの。
公哉:タキさんもそうだったんですか?
タキ:そうよー。さすがに毎晩はキツイから、『ハイチオールCプラス』は手放さなかったけどな! F1へ行ったら、食って呑んで、それも大切な仕事のひとつなのよ。
公哉:『ハイチオールCプラス』……シミ・ソバカス用の薬じゃないですか?
タキ:違うよー。そもそもは二日酔い用の薬だったのよ。呑む前に飲む! 呑んだ後に飲む! 僕はこれでバッチリだった。いまでも飲んでいるよ。ただ、いまの公哉くんはまだ薬に頼らず、肉体の基礎代謝をちゃんと上げるべきだな。

●ロータスF1のテスト、頑張ってください!
公哉:あと、今回のレースで初めてご紹介いただいたフィジオも良かったです。
タキ:彼はプロフェッショナルだからね。
公哉:こちらが何を言わなくても、すべての準備と片付けを済ませてくれました。
タキ:そうでしょ。彼はちゃんとレースが分かっているの。ドリンクの用意も、ヘルメットの用意も。しかも、レース前の渋滞対策として、いざとなったらホテルからサーキットまでスムースに行けるよう、ちゃんとバイクも借りているからな。彼に任せておけば安心。そういうところにお金を惜しんじゃダメ。
公哉:マッサージも上手かったですね。
タキ:彼はイタリア式で、オイルを塗って筋肉の乳酸を素早く取り去るのよ。レース後のダメージは?
公哉:かなりラクです。
タキ:あとはレースの結果だな!
公哉:……(汗)。
タキ:まあ、ここまでは公哉くんもレース経験の無いサーキットばかりだったからな。結果は出ていないけれど、十分だったと僕は思うし、エンジニアもそう言っている。
公哉:自分自身は少し凹んでいますけれど……。

タキ:いやいや、バーレーンはクルマに大きな問題があって出遅れただけでしょ? それでレースではぶつかってペナルティだっただけでしょ? 次のバルセロナは相変わらずのクルマと、公哉くんのピットレーンのスピード違反でしょ? 問題ははっきりしているから、ぜんぜん心配していない。あとはそれをいかに解決するかだけだよ。そしてここではクルマの問題があったのに、初モナコでトップから約1.8秒遅れの予選16番手は立派な成績だよー。僕なんて、初モナコではトップから約9.5秒落ちで26番手の最後尾だったからな!
公哉:それ、ぜんぜん慰めになっていませんが……(汗)。
タキ:それに、すぐF1に乗るという話じゃなかったでしょ? 成績はたしかに大切だけれど、ここ2年はGP2チャンピオンでもF1に乗れていない。GP2はF1への準備と割り切ったほうが良い。ちょっと、公哉くんの気持ちが急ぎ過ぎているんじゃないかな?
公哉:そうかもしれません。もう少し落ち着いてGP2に取り組みます。
タキ:おお、もう空港だよ。あと1時間15分あるから大丈夫だな。とりあえず“Kiss & Fly"で下ろすけれど、搭乗手続きが間に合わなかったら電話して!
公哉:ありがとうございます! お疲れさまでした!
タキ:じゃあ、次のオーストリアも頑張ってな!
公哉:はい! タキさんも、ポールリカールのロータスF1のテスト、頑張ってくださいね!
タキ:え? なんで知ってるの……(汗)。

本日のレースクイーン

長瀬れなながせれな
2025年 / スーパーGT
aprVictoria
  • auto sport ch by autosport web

    RA272とMP4/5の生音はマニア垂涎。ホンダF1オートサロン特別イベントの舞台裏に完全密着

    RA272とMP4/5の生音はマニア垂涎。ホンダF1オートサロン特別イベントの舞台裏に完全密着

  • auto sport

    auto sport 2025年7月号 No.1609

    【特集】LE MANS 2025
    “史上最混戦”の俊足耐久プロト頂上決定戦

  • asweb shop

    STANLEY TEAM KUNIMITSUグッズに御朱印帳が登場!
    細かい繊細な織りで表現された豪華な仕上げ

    3,000円