インディジャパン前の最後のレースとなる第15戦ケンタッキーに挑んだロータス/KVレーシングの佐藤琢磨。14番手からのスタートを切るも、1周目ターン4でまさかのクラッシュを喫しリタイアでレースを終えた。
IZODインディカー・シリーズ
第15戦ケンタッキー
決勝:リタイア
ケンタッキーのレースは午後9時とスタートが遅かった。辺りはもう完全に夜となっていた。グランドスタンドの上から照明が照りつける中でレースにグリーンフラッグは振られた。予選14位の佐藤琢磨は集団の真ん中に身をおき、ターン1へと飛び込んでいった。
予選順位とほぼ変わらないポジションでターン2をクリアした琢磨は、バックストレッチを駆け抜けてターン3へアプローチ。ここでマシンは突然リヤのグリップを失い、クルッとスピン。最後尾近いグリッドから大きく順位を上げて来ていたトニー・カナーンをかすめ、コース外側のコンクリートウォールにクラッシュした。インディカーでの初の母国レース、インディジャパンに向けてオーバルでの経験をさらに積み重ねたかった琢磨だったが、今回はデビュー以来最悪の0周リタイアを喫した。それでも、ケンタッキーでの週末で琢磨は大きな収穫も得ることがでている。
Q:今日は寒い1日になってました。どんなセッティングにするべきか、エンジニアとはどういう相談をしたんでしょう?
琢磨:昨日、午前から午後へと大きなコンディションの変化があって、クルマのバランスが狂った。午後のファイナルプラクティスでは、決勝を見据えて、低い路面温度に合わせたマシンを作ってったんです。昨日のファイナルプラクティスで僕らは本来の調子を取り戻し、納得のいくセッションとできていました。ファイナルプラクティスが45分間と長くなっていたので、ね。今までは30分しかなくて、もうクルマのセッティングをいじる時間てないんですね。集団で走るのがメインになってしまう。それが昨日は長かったので、珍しくというか、初めてスプリングレートなんかもセッション中に変えて、その違いを凄い良い形で理解できて、結果も良かったので、当然その続きをクルマに施して今日のレースはスタートしました。
Q:ところが、1周目に急にリヤが滑った。
琢磨:正直、何が起きたのかわからないんですよ。ビックリするぐらいリヤが一気にスライドしちゃった。
Q:マシンが浮いたように見えました。
琢磨:なんかもう、本当に……ちょっと意味わかんないんですよね。アクセル全開で飛び込んでってグリップを失ったとかじゃない。前のマシンにくっつき過ぎないように、慎重にね、本当に慎重に回ってって、なんでこんな結果になるのか、凄い今、混乱してるんですけど……。
Q:14番手というスターティングポジションで、10番手周辺以降からはタービュランスがキツイという説もありますが、ターン1~2は難なくクリアしてきたんですものね?
琢磨:そうです。1~2コーナーは結構みんなバーッと上に上がってって、かなりワイドになったんですよ。僕は逆に内側に凄く開いたポイントがあったので、そこに入ってって、むしろ前に凄い勢いで追いついてった。ターン2の出口でダリオ・フランキッティの真後ろについた。その時に真横にもマシンがいたので、アクセルを少し抜いてる。そこで特に問題はなかったんです。
Q:順調にスタートが切れていた。
琢磨:1コーナーも2コーナーもリーズナブルというかね、もちろんまだタイヤは冷えていたけれど、周りと同じように走って、まったく問題なくクリアした。バックストレートでフランキッティの真後ろにつけたけれど、抜ける感じではなかったのでアクセルを戻したんです。あんまりくっつき過ぎてターン3に入ると、ダウンフォースがなくなっちゃうんでね。間隔を開けたつもりだったんですよ。長いレースなんだし、1周目だったから間隔を開けて、マシンを安定させてターン3に入ってった。そして、周りと同じように、ペースを合わせてアクセルを踏み込んでったんです。あの時点でアクセルは半分ちょっとしか踏んでない状態だったのに、ホントにいきなりリヤがすべった。どうしようもなかったです。
Q:怪我はなかったんですか?
琢磨:体の方は大丈夫です。何ともないです。
Q:今回のアクシデントは、まだ原因が完全に究明されていないというところなんですね?
琢磨:ターン1~2はまったく問題なかったので、その続きでターン3~4も当然抜けられると思ってた。何度かオーバルのレースを走ってきたけれど、こんな経験はまったくないんです。
Q:前車との間隔も随分ありましたよね?
琢磨:ありましたよ。だから、わざとそれを作って、しっかり風を当てて行こうと思ったんですよね。
Q:フロントはグリップしている状態で、唐突にリヤのグリップが抜けたという感じですね?
琢磨:そうですね。データを見ると、ダウンフォースがコーナーに入る前になくなっていて、コーナーに入ってからダウンフォースが戻ってきてるんですけど、エアロバランスを見ると、なぜだか全部前に行っちゃってるんですよ。そこがちょっとわからないところなんです。
Q:マシンの一部が壊れた可能性もあるんですか?
琢磨:いや、今のところ壊れた形跡はないです。チームオーナーのジミー・バッサーも、「なんでだろう?」って言ってましたね。彼はテレメトリーで見て、僕が凄くコンサーバティブに、慎重に行ってるのは見てるんですよ。だから、凄くみんな今、悩んでますね。
Q:では、最後に次戦インディジャパンへの抱負をお願いします。
琢磨:こんな風なレースになることは、もちろん誰も望んでいませんでした。ここで何が起きたのかをしっかりと分析し、理解することが大事だと思います。もう一度データをよく見て、映像のリプレイも見ます。エアポケットになってる可能性もありますから、もう一度全部を見直します。これまでにいろんなことが起きました。なんだか厳しい方向でいろいろ勉強をしてきている状態ですが、日本でのレースの前にシーズン最初からのレースをおさらいして、もてぎに向けて何が起きても対応できるようにしてインディジャパンを走りたいと思います。