2014年、DTMドイツツーリングカー選手権でマルコ・ウィットマンがドライブしチャンピオンを獲得したBMW M4 DTM。14年からのニューマシンでもあり、DTMの最先端技術が盛り込まれたマシンだが、そのチャンピオンカーそのものを、スーパーGTのテレビ解説でもおなじみの木下隆之がドライブした。その様子が12月26日発売のオートスポーツNo.1397に掲載されているが、同行したジャーナリスト、古賀敬介氏による“取材こぼれ話”をお届けしよう。
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http://www.as-books.jp/books/info.php?no=AST20141226
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■「M4乗る?」BMWモータースポーツからのお誘い
10月にDTM最終戦ホッケンハイムの取材を行い日本に帰国したら、現地でいろいろお世話になったBMWモータースポーツのPRからメールが来ていた。その内容は「ウチのM4 DTMに乗る?」という実に簡潔でお気軽なもの。最新鋭DTMマシンの助手席に乗る機会なんてめったにないだろうから、すぐにYESと答えたら、なんだかそういうイミではなく、横乗りじゃなくて運転しないか? というオファーだった。
同じようなお誘いはかなり昔ホンダから頂き、もてぎでスーパーGTのARTA NSXに乗ったことがある。だから、それがDTMであろうとも1〜2周の試し乗りならなんとかなるかなとやり取りを進めていったら、どうやらそんなもんではなく、きっちり時間をとって長時間ドライブすることができる模様。しかもタイヤはスリック。
その時点で、“これは自分の出番ではないな”と確信した。少なくとも現役のレーシングドライバーで、できればスーパーGT経験者でないと務まらない。そう思ってオートスポーツ編集部に相談したところ、ならば経験豊かな木下隆之さんが最適だろうという結論に達した。幸いにしてBMWモータースポーツからの招待枠は2名。ならばと自分も木下さんに同行し、現地では撮影に専念することにした。
■DTM参戦メーカーらしいおもてなし
試乗会の場所はスペイン南部、モンテブランコ・サーキット。日本人にはあまり馴染みのないサーキットだが、ヨーロッパではオフシーズンのテストでよく使われるトラックだという。日本から飛行機を乗り継ぎ約23時間。現地1泊、滞在時間24時間という超スプリント取材だが、それでもこんな機会めったにない。
スペインのセビリヤ空港に到着すると、そこにはBMWのスタッフが待っていた。そのままクルマでホテルに直行し、荷物を置くとすぐサーキットに。サーキットは専有状態にあり、僕ら以外にも各国から多数のドライバーやメディア関係者が集まっていた。市販車の世界ではこういった国際試乗会は頻繁に行われているが、モータースポーツではあまり聞いたことがない。それだけBMWがDTMに、そしてレースに力を入れているということだろう。スタッフの数も多く、ピット内に設けられたラグジュアリーなホスピタリティ施設やバナー類など、DTM最終戦ホッケンハイムで体験した、真剣かつウエルカムなもてなし精神が今回も強く感じられた。
サーキットに到着すると、簡単な説明の後すぐに慣熟歩行がスタートした。途中から強い雨が降ってきたが、14年DTMチャンピオンのマルコ・ウィットマンや、やはりDTMドライバーのアントニオ・フェリックス・デ・コスタは傘もささずズブ濡れになりながら、コーナーひとつひとつを丁寧に解説。雨と寒さでこちらが音を上げそうになったが、それでも彼らはいっさい手を抜かずコース解説を続けた。「ドイツ人ってやはりマジメなんだなあ」と実感した次第であります(ダ・コスタはポルトガル人ですけど)。
■雰囲気は本番仕様。ヘビーウェットの過酷な状況に
約1時間に及んだ雨の慣熟歩行の後は、これまた入念なコクピットドリルとシート合わせ。M4 DTMはホスピタリティ用のピットとは離れた専用ピットで準備が進められていたが、ピット内の雰囲気は完全にDTMレース本番仕様。お気軽な試乗会の雰囲気は微塵もなく、その時点で僕は「自分が乗ります」などと強引に押し切らずによかったなあと思った。
大ベテランで百戦錬磨の木下さんでさえも、その圧倒的かつ真剣な雰囲気にかなり緊張気味。あれほど表情がこわばった木下さんは、レースの時でもなかなか見ることができない。それぐらい強烈で圧迫感のあるムードだったのだ。
という感じで到着初日からいきなり超本気モードだったM4 DTMサーキット試乗会。ホテルに戻ったのは夜の10時で、次の日は朝5時起床。カーテンを開けると窓の外は雨、しかもかなり強い雨。初めてのサーキットで、初めてのマシンで、しかもそれがチャンピオンカーで、コースコンディションはヘビーウエット。
はたして木下さんはいかにして最高にタフな状況をクリアしたのか。その詳細は、オートスポーツ1397号(12月26日発売)で木下さん自身が書いた渾身の試乗記を是非! かなり面白いです。ちなみに、試乗を終えた後の木下さんの表情、これまた今まで見たことがないほど嬉しそうでした。
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