昨年までスクーデリア・フェラーリで、ビークル&タイヤインタラクション・デベロップメントとして活躍した浜島裕英。その浜島さんのコラムがF1速報サイトで連載中です。題して、「浜島裕英のグランプリ人事査定」。今回、F1速報サイトでしか読めない第4回コラムの一部をお届けします。
第四回査定:敗北直後の華麗なる“転身”
第3戦中国GP。例によって、メルセデスAMG勢の一発のラップタイムの良さはここ2戦と変わることなく、特にルイス・ハミルトンは図抜けた速さを示していた。しかし、フリー走行2回目のロングランでは、フェラーリ勢のデグラデーションがメルセデスAMG勢よりもほんの少し良く、しかも20周以上の連続走行を行い、しっかりとロングランをこなしていた。これに対しメルセデスAMGのハミルトンはソフトタイヤでのクリフ(急激なデグラデーション)を訴えており、再びフェラーリに勝利のチャンス到来かとまで想像してしまうという初日だった。
メルセデスAMG勢とフェラーリのデグラデーションについつい目が行ってしまっていた、その最中におやっと思うことが起きた。それは、メルセデスAMGのふたりのドライバーのロングラン時のタイヤが異なっている、すなわちハミルトンがソフト、ニコ・ロズベルグがミディアムだったのだ。
私の記憶が正しければ、昨年来彼らふたりはいつも同じプログラムで動き、ソフト側のタイヤだけを基本的にロングランしていた。言いかえれば、ピレリが投入してきたソフト側のタイヤ(今回の場合であればソフト)だけをふたりのドライバーで確認して、最初のスティントの長さをこのデータに基づいて計算し、ハード側(今回の場合であればミディアム)についてはピレリのデータなどを基にして、ピットストップの戦略を構築していたと想像される。それが出来たのも、彼らが他チームに対して、常に優位に立っていたからなのだ。
ところが、あのマレーシアGPでの敗北を受けて、彼らは自分たちの行動を大幅に見直したと思われる。両方のタイヤのデータをロングランによってきちんと採取し、戦略策定にそのデータを活かすように変えたのであろう。
従来の行動方針をかなぐり捨てた結果…