カナダ・エドモントンにあるシティセンター・エアポートで開催されているIZODインディカー・シリーズ第11戦。空港を利用した特設サーキットで行われた予選は、3連勝中のライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポーツ)が今季初めてのポールポジションを獲得した。昨年ポールを獲得した佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン)は、ファイアストン・ファスト6に残り4番手を獲得した。
予選日は1日中雨になるという天気予報は、ものの見事に外れた。朝9時に始まったプラクティスは、1時間のうちの半分がやや湿った路面となってはいたものの、後半は完全なドライコンディションでの走行となった。
予選開始は午後1時。雲は徐々に色を濃くして来ていたが、第1セグメントの第1グループが走り出した時点で、まだ雨は降って来ていなかった。降りそうで降らない。そんな状況のまま予選は終わってしまう可能性すら出て来た。第1セグメントの第2グループもドライで終了した。
第1グループはウィル・パワー(チーム・ペンスキー)が圧倒的な速さを見せつけてトップ。佐藤琢磨も3番手で悠々と第2セグメントへの進出を果たす。第2グループはライアン・ハンター-レイがトップで、ジェイムズ・ヒンチクリフが2番手と、アンドレッティ・オートスポーツが1-2を獲得した。
第2セグメントが開始される前になって、ようやく雨が降り出す。強いものではなかったが、スリックで走れる路面ではなくなった。しかし、セッティングをフル・ウエットにまで変更する踏ん切りもつけにくい状況だった。
ウエットタイヤでの戦いは、路面コンディションがどう変化するかも大きな要素となり、それが大きなドラマを生んだ。第1セグメントで速さをみせたパワーが最後の最後で7番手へと陥落し、まさかの第2ステージ敗退となったのだ。チェッカーフラッグが振られた時点で9番手だったパワーのチーメイト、ライアン・ブリスコ(チーム・ペンスキー)が最終ラップで3番手へと一気に躍進! チャンピオン争いを行っているチームメイトを7番手へと弾き出した。
このウエットセッションを制したのは琢磨だった。ウエットコンディションを得意としている琢磨は、予選が全面的に雨になることを望んでいたぐらいだった。第2セグメントの彼は、グリップの低い路面でのアタックをおおいに楽しんでいる様子だった。琢磨とチームの期待に反し、雨はここでストップ。ファイアストン・ファスト6はオルタネートタイヤでの勝負となった。
最初にコースインしたのは琢磨。セッションは10分間と短いため、雨が降り出す可能性もあるからだ。気温が低く、路面温度も非常に低いコンディションとなっていたので、琢磨陣営はユーズド・レッドをチョイスした。
ファイナルを戦った6人のうち、新品のレッドを投入したのはブリスコとタグリアーニのふたりだけだったが、彼らがポールポジションを獲得する事は無かった。
最速タイムをマークしたのはハンター-レイ。彼らは「雨は絶対に降らない」に賭けていた。そして大きなギャンブルを成功させ今季初、キャリア2回目のポールポジション、そして貴重なチャンピオンシップ・ポイント1点を稼いだ。
ハンター-レイは他の5人全員がコースインした後もピットで待ち続けた。そして、雨が降らなかったことでもっともグリップが高まっていたセッション終盤に、もっとも状態の良いタイヤでアタックしたのだ。ユーズド・レッドで4周だけのアタック。
タグリアーニより1周、ダリオ・フランキッティ(チップ・ガナッシ)やエリオ・カストロベス(チーム・ペンスキー)より2周も少ないアタックで彼はポールを手に入れた。このセッション中に雨が降ったら、ハンター-レイたちのギャンブルは大失敗に終わっていただろう。
ポールを獲得したハンター-レイだが、彼らはトロントでのレース後に予定外のエンジン交換を行っているため、ルールにより10グリッドの降格を受け入れなければならない。明日のレース、彼は11番グリッドから4連勝を目指してスタートする。
予選2番手でポールからスタートするのはフランキッティ。フロントロー外側はブリスコで、琢磨は2列目イン側の3番手グリッドを獲得した。
「僕らは待ちの作戦に出た。それが正解だった。プラクティス1でのマシンは良くなかったが、各セッションでマシンを大きく進歩させて来たアンドレッティ・オートスポーツのチーム力がポール獲得に繋がったと思う。明日はダリオがポールスタートだから、僕に4連勝のチャンスはあるね」と彼は語った。彼の3連勝はすべてフランキッティがポールスタートだ。
そのフランキッティは、「近頃不運なレースが続いているから、今回は何もトラブルや事件のないレースであって欲しい。そうすれば好結果をおのずと記録できるはずだ」と話した。
予選4番手という今季の自己ベストを記録し、明日のレースは3番手スタートを切れる琢磨は、「去年ほどうまくはいかなかったけれど、自分たちの持てる力は発揮し切れたと思います」と語った。「予選4番手は素晴らしい結果で、厳しい結果を残して来ているチームにとっても良いものだと思います。トップ6にまた入ることができたのも嬉しいし、ウエットのQ2は楽しかった!」
「Q3は雨が来る前にタイムを出しておくか、路面が乾くまで待つかというギャンブルでした。僕らは雨の前にコースインすることとし、それはうまく行きませんでしたね。それでも2列目からスタートできるんだから、ハッピーです」と語る。
ポイントランキング2位のパワーは予選7番手で、明日は6番手スタート。ランキング3位のカストロネベスは予選6番手だったので5番グリッドで決勝スタートを迎える。
「厳しい結果になった」とパワーは悔しがっていた。「自分たちのマシンは速いものに仕上がっていたと思うが、天候を味方につけることができなかった。セッション終盤にラインが乾き、良いタイムが出せるとの判断を下せていなかった」。3列目からの優勝は十分に可能。パワーは、「大きなチャレンジになるが、自分たちは必ずや明日、好結果を掴まなくてはならない」と自らにプレッシャーをかけいていた。
ランキング4位のスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)は、ドライで絶好調と見えていたが、ウエットの第2セグメントで敗退。予選8番手だったが、今回使っているのが今季6基目のエンジンとなっているため、10グリッド降格のペナルティにより18番グリッドという後方からのスタートを余儀なくされる。
ランキング5位のヒンチクリフは予選12番手だったので、11番手スタートだ。チャンピオン争いは混沌としたままで、ランキング6位のトニー・カナーン(KVレーシング・テクノロジー)やランキング7位のサイモン・ペジナウ(シュミット・ハミルトン・モータースポーツ)にでさえ逆転タイトルの可能性は残されている。カナーンは今回はマシン・セッティングが思うように進んでおらず予選結果は22番手と低迷しているが、ペジナウは予選9番手で、ドライでの速さから上位フィニッシュの可能性を強く秘めている。
明日の天気予報は晴れ。これがまた外れる可能性は小さいだろう。
