強風に運ばれて雨雲が上空に来たのは午後5時10分、開幕戦予選Q1はそこまでが“ドライ”、それから“ウエット”に一変。今年オフ・テストでは散水車で人工的に濡れた路面とした走行経験はあっても雨の中のアタックはまったく初めて。また、14年ピレリのインターミディエイトは昨年と同じだが、フルウエットは変更されトレッド・ブロックが大きくなった。このニューウエットの摩耗度合、発熱性など実走行データはどのチームにもまったくくない。
雨がらみQ2からQ3でどちらをチョイスするか。メルセデス勢は思い切りよく初めての“ニューウエット”を、レッドブルのダニエル・リカルドは従来と同じ“インター”を。実績あるものを手堅く選択したリカルドがPP争い、ルイス・ハミルトンに0,317秒差の2位(もちろんベストグリッド)、3位ニコ・ロズベルグを抑えこみ地元ファンを喜ばせた。
濡れたQ3勝負ポイントはセクター3。この所要タイム順で1~9位までが決まった。アルバートパーク攻略の鉄則はここ、ラップタイムに最も響く。特に15コーナーはボトムスピード75~80km/hの低速(ドライ時)だが、マシン・トータルグリップの「5%アップ=0.2秒差」にもなる(!)。
手もとチェックでPPハミルトン41秒8、リカルド41秒9、ロズベルグ42秒1、ケビン・マグヌッセン42秒6、フェルナンド・アロンソ42秒7、ジャン・リュック・ベルニュ42秒8、ニコ・ヒュルケンベルグ42秒8、ダニール・クビアト43秒3、フェリペ・マッサ43秒5だ。
メルセデス勢の一角を崩したレッドブル新鋭リカルド、彼はドライ路面のQ1最速でセクター3トップタイムをマーク。昨年トロロッソでもタイムアタックの流れが最終セクターまで落ちないというか、むしろ上がる傾向が目立った。タイヤのグリップピークを把握、セクターごとに“プッシ・カーブ”を上げられる彼の進化が14年レッドブル・デビューで光った。
ベッテルには予選でスピードダウン症状があり12位、完全なアタックを許されなかった。金曜セクター3を見ていて彼のアクセリングは鋭く、低中速域コーナリングではリカルド以上の維持速度を示した。あの“オフブロー”がなくてもアクセルを踏み込むポイントは早い。リヤがムズムズするのをなだめるような「バランス・ステア」も瞬時に、適切な角度で決める。おおげさな“カウンター・ステア”でふらつくことは殆どなかった。
しかし土曜FP3から挙動がやや変わった。パワー&トルクのアウトプットに対してベッテルのコントロール・アクションがFP3から少しずれ12位に終わった。Q1は8位をキープしたが雨がらみ路面でドライバビリティはさらに難しくなり、何度もコースを外れかけた。リカルド実力2位、ベッテル不運12位、明暗は分かれた。
失速したウイリアムズは雨に敗れたと言える。マッサ9位、ボッタス10位(5グリッドダウン)、オフテストを席巻してきた彼らは、インターもウエットも十分な発熱性を得られずタイムが伸び悩んだ。ドライ路面ではバーレーン・テストの延長線上の速さを見せ、特にセクター2高速コーナー域でFW36は空力設定がずば抜けていた。だがセクター3低中速域ではダウンフォースレベルが不足気味、これはいわゆる「エアロ・マッピング」の誤算(?)だ。第2戦マレーシアGP、第3戦マレーシアGP、パーマネントコース&ドライ条件で予選パフォーマンスの真価を期待したい。