「可夢偉の話はネタになる」(某外人ジャーナリスト)
金曜日のフリー走行終了後の午後4時半すぎ、セパン・インターナショナル・サーキットに突然スコールが訪れた。4時35分から小林可夢偉の囲み取材が行われる予定になっていたため、日本人メディアの多くはケータハムのホスピタリティブースでタイミングよく雨宿りができた。そこにやや遅れて雨に打たれながら、海外のメディアが1人走ってきた。日本語の囲み取材の後に用意されている英語での取材に参加するためだ。
可夢偉の取材が終わってから、メディアセンターで行われたFIAの燃料流入量に関する会見に出席すると、偶然にもそのジャーナリストと席が隣になったので、雨に濡れながらも可夢偉の取材に来た理由を聞いた。
「僕らは手分けをして、できるだけ多くのドライバーのコメントを拾っていて、今日は僕が可夢偉の担当だったんだ」
ただし、理由はそれだけではなかった。
「可夢偉の話はネタになるんだ。それは何か問題発言をするという意味ではなくて、可夢偉は自分の言葉で本音を話してくれる。決して広報が準備したコメントを唱えるようなことはしない。だから、原稿に使える」
そのいい例が、木曜日に語った低くなったノーズの危険性についての発言だ。もちろん、これは可夢偉しか経験していないことだから、可夢偉にしか話せなかったことだが、もし1年目か2年目の若いドライバーがオーストラリアGPで可夢偉と同じような事故に遭ったからといって、可夢偉のようにノーズの危険性を唱えたかどうかは疑問である。
2年ぶりに復帰して驚いたことのひとつに、可夢偉は「まだ4年目にも関わらず、みんながベテランのように接してきたこと」をあげていた。確かに今年の22人のレギュラードライバーの中で可夢偉は出走数では9番目に長いキャリアを誇る。しかし、それ以上に、物事をはっきりと語る可夢偉にはご意見番的なベテランの匂いを感じる。
成績が良い時だけでなく、たった5周しか走れなかったような時でも取材に駆けつけたいと思わせる魅力を持ったドライバー。そういうドライバーはF1界といえども、そんなに多くはいない。