たった2枚の写真——これが1月26日にザウバーがインターネットで配信した2014年のニューマシンとなる「C33」の発表である。しかも、写真は真横と斜め前方からの2カット。その事実だけをとらえれば、いささか不親切なように思えるザウバーの新車発表。もちろん、現代の新車発表というのは、多かれ少なかれマーケティングを優先した一種のセレモニーであり、秘密にしておきたい部分は見せなかったり、カモフラージュするというのはどのチームもやっていることである。ただ、それらを考慮しても、今回のザウバーの発表は特異である。だからこそ、その発表のやり方に、ザウバーの工夫と自信を感じる。
なぜなら、ほぼ同じアングルからの写真を使用した理由として、ザウバーが故意に見せたくない部分をテストまでできるだけ隠すための工作があったのではないかと考えられるからだ。ほぼ同じ角度の写真を見せることで、死角を作ったのである。その死角とは、ひとつはノーズの細さとフロントウイングを吊り下げているステーの形状。もうひとつはフロントタイヤの内側、主にフロントサスペンション周辺の空力処理。そして、3つめがフロントウイングの翼端板で隠されたメインフラップおよびアッパーフラップの処理だ。
2枚の写真だけで判断できるのは、新しく規定されたノーズは、フェラーリのようなコクピットと同じ幅ではなく、ステーから先の部分を細くしたマクラーレンと同じアリクイタイプ(ザウバーは「ゾウムシ」と呼んでいる)を採用していること。2013年のC32はサイドポンツーンの幅を狭くしていたが、C33ではターボエンジンの冷却の関係からか、通常の幅に戻っているように見えること。そして、フロントウイング翼端板後ろ側(アッパーフラップと連動している部分)の処理が新しくなったことである。
もちろん、見えないからといって、必ずしもそこに驚くべきアイデアが存在しているとは限らない。特に最近のザウバーはテクニカルディレクターだったジェームス・キーが2011年に抜け、13年にはチーフデザイナーのマット・モリスと元ミシュラン・エンジニアのピエール・ワシェが立て続けに離脱するなど、開発陣が手薄になっていることは事実で、今年のように大きくレギュレーションが変更されるときには、その変更に対応するだけで精一杯となることが多い。
ただ、キーパーソンは抜けたものの、このチームにはF1界を代表するようなハイレベルな風洞施設が存在していることも事実である。
C33を設計したチーフデザイナーのエリック・ガンダランは言う。
「マシンの本当の姿を見ることができるのは、最初のテストとなるヘレスになるだろう。でも、われわれはその後も開幕戦へアップデートパーツも用意している」
そこには、大きく変更されたレギュレーションに対する自信が感じられる。
