フェラーリと似て非なるカモノハシ・ノーズ
ライバル勢の多くがいわゆる「アリクイ」タイプのソリューションで、2014年のテクニカルレギュレーション変更に対応してきたのに対して、メルセデスAMGはフェラーリ同様、ノーズの高さを低くした「カモノハシ」のくちばしような形状のノーズを採用してきた。
コクピットからノーズの形状を維持しながら低くすれば、当然フロントウイングとの隙間が狭くなる。フェラーリがウイングステーを広げて、狭くなったその隙間の開口部を広げているのに対して、メルセデスAMGはステー(吊り下げ部)自体を薄くかつフロントウイングとの設置面積を小さくすることで、前方からノーズ下に流入する空気流を妨げないという工夫を見せている。ただし、この接合部分の空力をかなり攻めすぎたためか、ヘレステストの初日にストレートエンドでフロントウイングが脱落するという事故を起こしている。
事故を起こした翌日のテストでメルセデスAMGがどのようなスペックのステーを使用したかについての詳細は不明だが、外見上は大きな変更が見られないことを考えると、設計上のミスというよりは、製造工程での不具合の可能性が大きく、根本的な問題にはなっていないようだ。
それよりも、ライバル勢のノーズを見たメルセデスAMGが、今後どのようにノーズ部分をアップデートしてくるのかは興味深いテーマである。
フェラーリと同タイプのノーズであるW05だが、フェラーリと完全に異なる部分がある。それはノーズ後方に取り付けられているフロントサスペンションである。フェラーリがプルロッド方式を採用しているのに対して、メルセデスAMGはプッシュロッド方式。しかも、フェラーリが前年同様、上下のウィッシュボーンをコクピットの高い位置にマウントしているのに対して、メルセデスAMGはウィッシュボーンのコクピット側取り付け位置を昨年よりも下げている。マシンを正面から見ると、フェラーリのサスペンションが「ハ」の字型に見えるのに対して、メルセデスAMGはほぼ水平となっているのがわかる。
現在のサスペンション、特に可動範囲が極めて小さくなったフロント側の存在価値は、ビークルダイナミクス(車両運動力学)としてよりも、エアロダイナミクスとしてある。つまり、サスペンションの方式、及びマウント位置が異なるということは、フェラーリとメルセデスAMGが同じタイプのノーズでありながら、かなり異なった思想の空力でマシンを開発していることを意味する。
アリクイかカモノハシかという対決同様、プルロッドかプッシュロッドかという対決にも、注目していきたい。