ノーズの見た目以上に堅実なマシンづくり
おそらく、11チームのニューマシンの中で、もっともシンプルな“アリクイ”型ノーズをしているのがフォース・インディアのVJM07だろう。テクニカルディレクターのアンドリュー・グリーンによれば、「新しいレギュレーションに沿ってノーズをデザインすると、これ以外のやり方もあることはわかっている。しかし、われわれは2013年のマシンであるVVJM06の遺伝子を継承する道を選んだ。確かに保守的だと思われるかもしれないが、われわれにとってはそれが現実的だからだ」
グリーンが説明したように、VJM07のマシン前半セクションは、2013年のマシン、VJM06を思わせるフォルムをしている。違いはレギュレーションによってリファレンスプレーン(基準面)から625mm未満の高さに定められていたフロントバルクヘッドの高さが100mm引き下げられて525mmへと低く構えている点である。
さらにレギュレーションではノーズの先端から50mm後方の位置で、基準面より185mm未満へと、ノーズの高さが大きく引き下げられたため、フロントバルクヘッドからノーズの先端に向かって、急勾配が設けられた点だ。
ただし、レギュレーションでは、「衝撃吸収構造は前輪車軸より前方750mm以上前方に出ていなければならない」と定められている一方で、「ノーズ先端から50mm後方の位置でのノーズの断面は、9000平方mm以上の断面積を有していなければならない」となっているので、前輪車軸より750mm前方からノーズ先端までは9000平方mmの断面積を持つ細いノーズにすることが可能となった。フォース・インディアのアリクイノーズは、まさにこのレギュレーションに合わせてシンプルにデザインしたものと言えよう。
もちろん、同じアリクイ型でもマクラーレンなどのように、細長い部分と衝撃吸収構造の部分を融合させ、複雑な形状にする手法もある。しかし、そのためのエアロダイナミクスの開発には時間とリソースがかかるため、フォース・インディアは未知の領域にはあえて進まず、着実な進化を遂げる道を選んだのである。
フォース・インディアの空力が正常進化した理由は、もうひとつある。それは2年ぶりにチームに復帰するニコ・ヒュルケンベルグの身長が184cmと長身だったことだ。昨年までステアリングを握っていたポール・ディ・レスタは身長185cm。エイドリアン・スーティルも183cmだったため、フォース・インディアのコクピットは、長身ドライバーでも不利にならないようにデザインされていた。そのコンセプトをわざわざ崩す理由はない。
過激なノーズとは裏腹に保守的なアプローチでデザインされたVJM07。しかし、最初のテストとなったヘレスでは、好調に周回を重ねたメルセデス・エンジン勢の中にあって唯一、「いろいろと異なるチャレンジにぶつかり、操作的には楽なテストではなかった」(チーフオペレーションオフィサーのオットマー・サフナウアー)ために初期トラブルが相次ぎ、走り込みが十分に行えなかった。
昨年はタイヤの使い方において、前半戦で目覚ましい活躍を見せたフォース・インディア。堅実路線をとった今年、再びセカンドグループをリードするには、何よりも信頼性向上が鍵となることだろう。