ドライバーラインナップも発表され、いよいよマクラーレン・ホンダ復活へカウントダウン。F1史に燦然と輝くマクラーレン・ホンダの名車を、写真とともに振り返る短期連載。
前年圧勝したマクラーレン・ホンダ。彼らが1989年シーズン用マシンとして登場させたのが、MP4/5だ。88年限りでターボエンジンは禁止。この89年から、全車自然吸気(NA)エンジンを搭載して、グランプリに臨んでいた。
フォードはV8、フェラーリはV12を選ぶなど、非常にバリエーションに富んだエンジンが登場したこの年。ホンダが選択したのは、V12のパワーを持ちながらV8のコンパクトさを兼ね備えた、V10エンジン。V10には特有の振動問題があったが、ホンダはこれも解決し、実戦に持ち込んだ。
このRA109Eと名付けられたV10エンジンを搭載したのが、マクラーレンMP4/5。ただこのマシンは、前年のMP4/4をほとんど踏襲したマシンだった。重心の低さはキープされているものの、フロントサスペンションは当時すでに時代遅れとなりつつあったプルロッドシステム。前後のウイングも、MP4/4とほとんど変わらない。
開幕戦に持ち込まれたMP4/5は、非常にピーキーな性格を現していたという。それでも、セナとプロストの天才的なコントロール、そしてホンダエンジンのパワーにより、マクラーレンに2年連続のコンストラクターズタイトルをもたらすこととなった。
ドライバーズタイトルは前年に引き続き、セナ対プロストの争い。シーズン半ばからは両者の対立が激化し、ほとんど口もきかないような険悪な状況。プロストが「ホンダはセナをひいきしている!」と訴えることもあった。
決着はこの年もやはり鈴鹿。シケインでセナとプロストが接触し、プロストがその場でストップ。セナは走行を再開し、2年連続でのチャンピオン獲得か……と思われたが、接触からコースに復帰する際にシケインを通過しなかったとして、レース失格の裁定。これにより、プロストが自身3度目のタイトルを手にすることになる。
チャンピオンになったとはいえ、チームやセナとプロストの関係は最悪の状況であり、プロストはこの年を最後にマクラーレンを離れ、フェラーリへと移籍していくことになる。