2015年の合同テストが解禁されたスペイン・ヘレスで新車のSTR10を登場させたトロロッソ。昨年は変更されたレギュレーションを満たすために、アリクイのように細く長いノーズを採用して周囲を驚かせたトロロッソだが、今年再びノーズに関するレギュレーションが変更されると、今度は一転、その「アリクイ」ノーズを封印してきた。
細長いノーズを極力禁止しようと変更が加えられた2015年の新レギュレーション。それでも、レギュレーションの解釈の仕方によってはノーズの先端に突起物を残す道は残されており、レッドブルやウイリアムズといった、昨年アリクイノーズを採用したチームの多くは、突起物を残す選択をしている。その中で、トロロッソはあえてアリクイノーズを排除し、低くて長いロング・スラントノーズを採用してきた。つまり、今年のトロロッソSTR10は、昨年のSTR9の正常進化マシンではないということができる。かといって、STR10が退化したわけでもなく、突然変異して現れたマシンでないことは、マクラーレンとフェラーリも同様の処理をノーズに施していることからもわかる。
テクニカルディレクターのジェイムズ・キーは昨年、新車を発表したときにこんなことを言っていた。「あまりにもレギュレーションが大きく変更されたため、STR9にはまだ多くの改良できる余地を残している。聞こえは悪いが、2015年以降に向けた叩き台のようなマシンだ」
つまり、ノーズの変更もキーにとっては想定済みだったのかもしれない。それを裏付けるのは、変更されたのがノーズだけではないことだ。キーはさまざまな変更をSTR10に施している。まずサスペンションのジオメトリーを変更。ロワアームの車体側の取り付け位置を若干上げただけでなく、ステアリングロッドをアッパーアームと同様の高さに調整している。
フロントサスペンションの車体側の付け根、モノコックの下に垂れ下がっているターニングベインの形状も一変。昨年はレッドブルに似たタイプを使用していたが、今年はメルセデスAMGに酷似した形状に変化した。興味深いのは、車載カメラ設置用のノーズ両脇に設けられたスペースの形状も、昨年までのレッドブルタイプではなく、メルセデスAMGのようにやや上方に飛び出すように湾曲したユニークなデザインにしていることだ。
さらに、その後方にあるサイドポンツーンは開口部がコンバクトになっただけでなく、下側が大きくえぐられている。昨年のSTR9はローバックダウンといって、後方へ向かって急激に下がるシルエットをしていたが、今年のSTR10は後方への傾斜よりも、サイドポンツーンの下側を後方までえぐって、そこに前方からの空気を通すサイドポッドダウンフォースを利用。この点でも、STR10のエアロダイナミクスが異なる思想で設計されていることがわかる。
もちろん、この変更にはパワーユニットを供給しているルノーが、補器類を含めて、パワーユニット全体をコンバクトにしていることが想像できる。
叩き台のようなマシンだったSTR9から一新したSTR10を前にして、「今年はトップ5を狙いたい」と語ったキー。STR10は勝負マシンとなるか?