今年でF1日本グランプリ開催25回目を迎える鈴鹿サーキット。過去24回のレースの中からファンの投票により選ばれたベスト10レースを連載形式でご紹介していきます。初回となる今回は、堂々の1位に輝いた2012年の日本グランプリ。可夢偉の熱い走りが、今も皆さんの心の中に、深く刻み込まれています。

 2012年、小林可夢偉が所属するザウバーは、相性のいいサーキットではトップチームに食らいつける速さを見せるほどにマシンの成熟が進んだ。可夢偉自身も第12戦で2番グリッドを獲得。第10戦で4位と絶好調。次は表彰台と期待が高まる中、第15戦日本グランプリを迎えた。

「鈴鹿は我々にとってベストトラック。きっと良いリザルトを残せると思います。鈴鹿にはたくさんのファンがいて、多くのパワーをくれるので、それを力に変えて良いレースをしたい」と可夢偉。上位入賞への気合十分で鈴鹿に乗り込んだ。

 可夢偉はフリー走行1回目のセッションスタートと同時にコースイン。その瞬間大きな声援に包まれた。サーキット中のファンが可夢偉に注目する中、フリー走行1回目は6番手を記録、2回目は最終的にロングランのテストを行ったためタイムは上がらなかったが、予選前に行われた3回目のセッションでも6番手に食い込んだ。

 予選は他のドライバー達もタイムを上げてくるはず。厳しい戦いになることは間違いない。それでも可夢偉は攻め続けた。ノックアウト方式予選Q1は2番手タイム。Q2は6番手で通過。そしてQ3、レッドブル、マクラーレン、フェラーリ、ロータスらの強豪チーム相手に一歩も引かない走りを見せ、見事4番手タイムをたたき出したのだ。3番手のジェンソン・バトン(マクラーレン)はギアボックス交換を行っているため5グリッド降格が決まっている。日本グランプリでは日本人過去最高ポジションの3番グリッドから、決勝レースを迎えることになった。

 決勝日の鈴鹿サーキットには10万3千人のファンが集まった。日本人表彰台の期待が高まる中、決勝レースがスタート。可夢偉はスタートを決めて2番手スタートのマーク・ウェバー(レッドブル)を抜き去り、トップのセバスチャン・ベッテル(レッドブル)のすぐ後ろに付けて1コーナーに侵入した。タイヤ交換のための1回目のピットインを行った直後に遅いクルマに引っ掛かり3位に。さらには後方からバトンが速いペースで追い上げ、終盤には可夢偉の直後に迫ってきた。可夢偉も自己ベストタイムを記録しながら逃げるが、ファイナルラップで追い付かれた。相手は2009年のチャンピオン。厳しい状況だ。しかし可夢偉は巧みな走りでバトンを押さえきりチェッカー。日本人3人目、2004年アメリカグランプリの佐藤琢磨以来、そして鈴鹿では1990年の鈴木亜久里以来の3位表彰台をゲットした。

 チェッカー後のウィニングランでは可夢偉とともに大声援がコースを1周。パルクフェルメに戻ってくると、グランドスタンドから「可夢偉! 可夢偉!」の大コールが始まった。表彰式でプレゼンターを務める羽田雄一郎国土交通大臣、鈴木英敬三重県知事、末松則子鈴鹿市長、小栗七生日本自動車連盟(JAF)会長も喜びを隠せなかった。可夢偉コールがサーキット中に響き渡る中、表彰台に登場した可夢偉と抱き合って喜びを表したのだ。表彰台の下に集まった各チームのスタッフ達も母国グランプリで表彰台に登った可夢偉を称え、大きな拍手を送った。鈴鹿サーキット中が一体となり、可夢偉の表彰台に酔いしれた瞬間だった。

「鈴鹿で初の表彰台だなんて、奇跡的なものを感じる。みんな! 応援してくれてありがとう!」とファンにメッセージを送った可夢偉。鈴鹿でトップドライバー達と渡り合い見事3位でフィニッシュしたその走りは、これからも語り継がれるだろう。

■F1日本グランプリ 語り継ぎたい24レース

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