2014年のF1が開幕し、メルセデスのニコ・ロズベルグが圧勝するという結果に終わった。メルセデスが下馬評通り強そうだということが分かったが、それ以外にも今シーズン全体を左右しそうなポイントがいくつか見えてきた。

●やっぱりメルセデスAMGは速かった
 開幕戦を制したのは、当初より最速と言われていた、メルセデスAMGのニコ・ロズベルグだった。グリッド3番手から抜群のスタートを決めて先頭へ。そのまま一度も首位の座を譲ることなく、2位に20秒以上の大差を付けてチェッカーフラッグまで駆け抜けた。

 レース前にはタイヤのタレも心配されたが、序盤から後続を大きく引き離したことで十分に面倒を見ることができ、最後の最後までペースが落ちることはなかった。そのペースの水準は他チームに比べて1秒ほど速く、“シーズン圧勝も見えた”かに思えるが、そうとも言えない。

 ロズベルグはほとんどノートラブルだったが、チームメイトのルイス・ハミルトンはエンジンがミスファイアを起こしてリタイア。彼は金曜日のフリー走行1回目でも開始早々にセンサー系のトラブルに見舞われてマシンを止めており、信頼性には大きく不安が残って。

 その速さには疑問を挟む余地はないが、信頼性の難点を克服しない限り、今季を制圧するのは容易ではないだろう。

●とはいえ想像以上に壊れない? 今年のF1マシン
 開幕当初は、マシンが大きく変わったこともあり、「完走率が低いのではないか?」と言われていたが、終わってみれば完走14台(チェッカーフラッグを受けたのが15台)。マシントラブルでリタイアしたのはベッテル、ハミルトン、ロータスの2台、エリクソンと5台だけであり、思った以上に信頼性が高くなっている印象だ。特にオフのテストで苦労していたルノーも3台が完走。さすがはF1というところを見せてくれた。

 ただ、オーストラリアはそれほど暑くなかったためにこの結果が出たという見方もある。次は灼熱、赤道直下のマレーシア。特にERS関連の冷却に苦労するチームが多いだろう。

●“奇跡”の2位表彰台もまさかの失格
 新加入のダニエル・リカルドが見事なドライビングを見せ、堂々と2番手でチェッカーを受けたレッドブル。しかし、レース後に燃料流量規定違反により、失格の裁定が下る。せっかく盛り上がったオーストラリアの観客たち(リカルドはオーストラリア出身。オーストラリア人がオーストラリアGPで表彰台に上がるのは、史上初めてのことだ)は、がっかりしたことだろう。セバスチャン・ベッテルも、昨日の予選ではソフトウエアのトラブルでQ2脱落、決勝もトラブルで早々にリタイアしてしまい、チームは開幕戦でポイントを持ち帰ることはできなかった。

 とはいえ、この開幕戦では好材料も多々見られた。レッドブルについては、オフシーズンのテストでトラブルが相次ぎ、しかもトップに肉薄できる速さを発揮できていなかったため、多くの人たちが「ちゃんと走るのか?」という目で見ていた。しかし、蓋を開けてみれば予選でフロントロウ獲得、レースでも(失格になったとはいえ)終始上位を走って2番手フィニッシュと、戦えるポテンシャルを証明した。信頼性(と遵法性?)さえ確保されれば、メルセデスを脅かす存在になるだろう。

●2014年は新人の当たり年か?
 マクラーレンの新人、ケビン・マグヌッセンが3位でフィニッシュ(結果的に繰り上がり2位)し、デビュー戦で表彰台登壇を果たした。デンマーク人としても初。同じくデビュー戦で表彰台を獲得したルイス・ハミルトン(現メルセデス。デビュー当時はマクラーレン)が3位だったことを考えても、まさに快挙と言える結果だろう。前を行くリカルド追いかけ、チームの指示にしっかり応えてレースを走り切ったことに価値がある。

 また、トロロッソの新人ダニール・クビアトも10位入賞。19歳と324日での入賞は、史上最年少記録となる(これまでの最年少はベッテルの19歳と349日。この時の入賞は8位まで)。

 新人ドライバーの活躍が目立った開幕戦だった。

●マクラーレンの高い信頼性
 2位マグヌッセンはスタートで上位に進出したことが好結果の最大の要因。3位バトンはレース中の状況を瞬時に見極め、いち早くピットインを決断するなど“頭脳プレー”が随所で光った。ピットインごとに順位を上げて3位。不運により予選Q2落ちしてしまったことから考えれば、最高の結果と言えるだろう。

 熟練チーム、そしてバトンの明晰さが発揮されたレースだったが、マシンについても高いレベルでの信頼性を備えていることが明らかになった。メルセデスとの差はまだ大きそうだが、上位を争う勢力のひとつであることは間違いなさそうだ。

●抜けない? フェラーリのマシン特性か
 フェラーリはある意味“地味”なレースを展開した。フェルナンド・アロンソはヒュルケンベルグをなかなか抜くことができずに蓋をされる場面が多く、表彰台を逃した感がある。レース中の最速ラップ記録は全体の3位であり、ペースも決して遅くはないのだが、なぜコース上でフォースインディアを抜けなかったのか? 速度の伸び方の特性など、メルセデス製パワーユニット(PU)勢とフェラーリPUユーザーの間には、何らかの性能差があるのかもしれない。

 一方のキミ・ライコネンは、今年から導入された“ブレーキ・バイ・ワイヤ”のフィーリングが合わないのか(本人は「タイヤに苦労した」とコメントしているが)、度々コーナーでタイヤをロックしたり、飛び出してしまう場面が目立ち、らしくない走りで7位に終わっている。ペースもアロンソに比べて1秒程度遅く、今後に向けて課題は多そうだ。

●ウイリアムズの本当の力
 ウイリアムズはやはり速そうだ。ただ、不安も見えてきた。

 バルテリ・ボッタスは5位入賞。これは前日のギヤボックス交換による5グリッド降格+レース中にウォールにヒットしたことによる後退を経ての順位であり、もしまともに走っていたらどうなっていたのか、実に興味深い。ただし、雨の予選でフェリペ・マッサ9位、ボッタス10位に沈んだのも事実。これはウエット路面でタイヤの発熱に苦労した、ということのようだ(F1のタイヤは、最適な温度に温めなければ、本来のグリップを発揮することができない)。

 ウイリアムズのマシンの最大のメリットは“タイヤへの優しさ”という点にあるようで、これはコンディション次第では“タイヤへの入力が少ない”というデメリットになってしまう諸刃の剣(2009年のブラウンGPのマシンが良い例)。セッションが終始ドライで行われれば、上位を争う存在には間違いないが、“雨”という大きなの弱点を露呈する結果となってしまった。

●燃費問題については次戦以降
 今季は燃料流量の最大値がエンジンの回転数によって比例する形で制限されている。これを基に各チームは、マシンに搭載する燃料の量を決めるのだが、余分な燃料はただの重りとなってしまうため、出来る限りギリギリの量を搭載する形になっている。燃料の最大流量は100kg/h、最大搭載量も100kgという規定の範囲内でだ。

 想定よりもエンジン回転数が高く、予想以上に燃料を消費してしまった場合には燃料が足りなくなる場合も考えられるが、今回はセーフティカーの出動などにより、燃料をセーブできるタイミングが増えたこともあり、ガス欠で止まるようなクルマは見られなかった。

 ただ、無線では燃料に関するやりとりが散見されており、各チームやドライバーが非常に気にしているのは事実。問題が表面化してくるのは、次戦以降となりそうだ。

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