F1速報モバイルサイトで好評連載中F1うんちく講座。今回オフシーズン計5回の限定コラムとして、虎之介選手、一貴選手、可夢偉選手の元マネージャー有松さんにF1界の気になる裏事情を解説して頂きました!

第3回:あなたもスーパーライセンス獲得を目指そう! 今のスーパーライセンス獲得方法の現状

 レーシングドライバーがF1に参戦するためには、スーパーライセンスと呼ばれるFIA(国際自動車連盟)からの承認が必要であることは広く知られています。その取得条件はFIAの国際競技規則の附則Lに定められていますが、実際に取得するのはそんなに簡単なことではありません。

 国際競技規則に定められた条件というのは、(A)F1参戦経験(前年度5戦または過去3年以内に15戦)、(B)前年度のF1テストドライバーとしてスーパーライセンス保有、(C)F2、国際格式F3、GP2,スーパーフォーミュラで過去2年以内に選手権3位以内、(D)IRLインディカーで過去2年以内に選手権4位以上、(E)ユーロF3、英国・イタリア・日本・スペインF3、フォーミュラ・ルノー3.5の現役チャンピオンと規定されています。

 しかし上記の条件を満たすドライバーは世界中で数十名しかいませんし、これは極めて狭き門です。そこで例外として、(F)フォーミュラカーで安定して突出した能力を発揮したとFIAが認めた者は、最新型F1マシンで連続する2日間で300km以上を走行した場合に限って申請を認めるという条件が付け加えられています。

 ただし、いずれの場合でも国際グレードAライセンスを取得していなければなりません。これはウェイト/パワーレシオが1kg/hp以下のマシンを用いるカテゴリーに参戦するために必要とされているものです。
 GP2には国際グレードB(ウェイト/パワーレシオ1~2kg/hp)で参戦することができますが、国際グレードAを取得するためには国際グレードBを必要とするカテゴリーで過去2シーズンにトップ5フィニッシュが5回以上か、選手権5位以内で、なおかつ国際格式レースに出場した経験がなければなりません。つまり、最低限のステップアップのボーダーラインがこのように定められているわけです。

 また、実際に上記の規定を満たしてスーパーライセンスを取得しようとする場合にも、その申請は現実的に容易にできるものではありません。

 まず、事務手続き上、スーパーライセンスはFIAの中でもF1に特化した認可制であるため、ドライバー個人ではなく、F1チームが申請することになります(発給要項を満たすドライバーであっても、F1チームと契約の無いドライバーにスーパーライセンスを発給することに意味は無いため)

 従って、F1チームとドライバーの間で結ばれた“有効”な契約書がなければ、そもそも申請ができません。その申請を受けて、FIAが当該ドライバーのライセンス発給元であるASN(日本人の場合はJAF)に申請内容(競技参加記録)に相違ないかの確認を取り、発給要項を満たしていることが確認されると、申請料の納付を確認が終了して、発給となります。

 もっとも、その申請料金も決して小さな額ではありませんから、チームが負担するのかドライバー本人が負担するのか、これもきちんと契約書に盛り込んでおくとおかないでは大きな違いになってきたりもします。

 残念ながら、今は組織としての現存例が無いのですが、各ドライバー育成プログラムの最終目標というのは、現実的には、若手ドライバーにスーパーライセンス発給要項を満たすドライバーに育てることと同義であり、そのために必要な経験と実績を積ませることを前提にプログラムを構成していました。
 しかし近年、FIAのホンネとしては、基本的に“限られた存在”であるスーパーライセンスを安易に発給したくはないというスタンスですから、そんな中で発給申請に際しケチのつけられないプログラムを構築するのは、実は組織的な中長期プランであり、複雑で緻密な計画が必要なものです。

 このような理由で、(A)~(E)のような条件を満たす“正攻法”でスーパーライセンスを取得するのは極めて難易度は高いと言えるでしょう。ウルトラCとも言える(F)を目指す者も少なくありませんが、現役ドライバーのほとんどが正攻法でスーパーライセンスを取得していることを考えると、ペイドライバー増加への批判の声が高まってはいますが、仮にその様に評されるドライバーが(A)~(E)の要項を満たしている場合、ドライビングスキルと実績は、実際、そう乖離しているものではないということがお分かり頂けるのではないかと思います。

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有松義紀(ありまつよしのり)
 1990年代から国内外のレース界に関わり、高木虎之介のマネージャーとしてF1界へ。以降、99年のホンダF1参戦プロジェクトに携わった後、高木とともにCART、INDYの世界に身を投じたが、2005年からはトヨタの若手育成プログラムTDPでヨーロッパにおける若手ドライバーやチームとの法務関連業務を担当。
 中嶋一貴と小林可夢偉をF1にデビューさせ、トヨタがF1から撤退しTMGとの契約が解消されてからも12年まで可夢偉のマネージャーを務めた。国内外のレースで活躍するアンドレア・カルダレッリの発掘・育成も氏の業績のひとつだ。

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