「メルセデスはすごい仕事をやった」(フォース・インディア 某エンジニア)
開幕前最後のテストとなったバーレーンで、セルジオ・ペレスが2度トップタイムをマークするなど好調な仕上がりを見せていたフォース・インディア。しかしオーストラリアGPでは、レース中はメルセデス・エンジン勢の中で最も遅いペースに終わった。
フォース・インディアのあるエンジニアは、その事情を次のように話す。
「今やF1界で必需品となっているFRIC(フリック/前後サスペンションの相互作用システム)が、私たちのチームのマシンにはついていない。これがあると予選で速いだけでなくロングランのペースも安定するので、レースでのタイヤ戦略にも役立つ。去年の後半に失速した最大の要因はタイヤの構造が変更されたことだが、実はトップチームはもちろん、ライバルチームの多くがFRICを導入していく中、フォース・インディアだけがその分野で進化できなかったことも忘れてはならない。今シーズンもスペインGPまでは目立ったアップデートは無いから厳しい」
それでも、オーストラリアGPではダニエル・リカルド(レッドブル)の失格による繰り上がりがあったとはいえ、ダブル入賞を果たし、好調だった昨年の開幕戦と同様のスタートを切った(昨年は7位と8位で10点獲得。今年は6位と10位で9点獲得)。
「やっぱりメルセデスのパワーユニットのおかげでしょう。パワーユニットに関しては、私たちからあまり多くの情報を語ることはできませんが、マシンに搭載する段階で説明を受けた時、『メルセデスはこんなことをやってきたんだ』とビックリしました。今回、メルセデスは本当に素晴らしい仕事をしたと思います。そのアドバンテージがあるうちに、しっかりとポイントを稼いでおきたい」
メルセデスのパワーユニットにどんな秘密が隠されているのかは不明だが、長年F1界で仕事するそのエンジニアが驚くほどの技術を新パワーユニットに盛り込んできたメルセデス。当分はメルセデス・パワーユニット勢が優勝争いを行うことになりそうだ。
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日本人F1ジャーナリストの尾張正博氏がグランプリの現場から、ドライバーやチーム首脳の生の声、パドックを賑わせているニュースの真相、レースのキーポイントやサイドストーリーなどを自身の取材情報からお届けする。2013年はGPインサイドとしてお届けしていた