23日にアイオワ・スピードウェイで開催されたIZODインディカー・シリーズ第10戦の決勝レースは、ジェイムズ・ヒンチクリフ(アンドレッティ・オートスポート)が制し、今季3勝目を挙げた。予選7番手も、エンジン交換のペナルティで17番グリッドからスタートした佐藤琢磨(AJフォイト)は、エンジントラブルでリタイアとなった。
予選ではアドバンテージを持っていたチーム・ペンスキーだったが、レースではアンドレッティ・オートスポートが立場を逆転させていた。
ポールポジションを獲得したが、エンジン交換で11番スタートとなったエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)は、とうとう優勝争いに絡むことなく8位フィニッシュでレースを終えた。ポイントトップの座を彼は守ったが、ランキング2位にミルウォーキーで浮上したライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)との差は9点にまで縮まった。
朝方の豪雨により、ターン4に水がわき出すトラブルが出てスタートは若干遅れたが、幸いにもレースは雨による中断もなく、250周のフル・ディスタンスで争われた。
カストロネベスのグリッド降格によりポールスタートはウィル・パワー(チーム・ペンスキー)のものとなったが、彼をアウト側からパスしてヒンチクリフがトップを奪った。そして、彼は最初のスタートで見せた優位をとうとう最後まで保ち続けた。
250周のうちの226周を彼はリードした。完勝だった。アンドレッティ・オートスポートは近頃はどのコースにいっても速さを誇示しているが、アイオワではヒンチクリフと彼のエンジニア、クレイグ・ハンプソンがレースに向けてマシンを完璧に仕上げたのだった。
レース終盤、彼にアタックを仕掛けたのはグラハム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)だった。6番手スタートで、一時は10位に落ちていたが、予選レースで見せたアウト側ラインでの速さがレース中盤に復活。短時間で2位に浮上し、ヒンチクリフにアタックした。しかし、アウト側ラインを完全に封じるライン採りでヒンチクリフはレイホールの攻撃を跳ね返した。そして、その後のレイホールはペースが上がらなくなり、ヒンチクリフは悠々とトップでゴールした。
レイホールに代わって2位に上がってきたのはライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)だった。レース序盤にレイホールに追突し、フロント・ウィングを傷めたこともあったハンター-レイだったが、イエローを利用してのノーズ交換でマシンは問題なく走れる状態に戻り、そこからはヒンチクリフに次ぐペースを獲得して2位にまで上り詰めた。12番手グリッドからのスタートを考えると、2位でもハッピーだろう。
3位はショート・オーバル・マイスターのトニー・カナーン(KVレーシング)。一時はトップ5フィニッシュも難しい状況と見えていたカナーンだったが、諦めない走り、粘り強い走りで表彰台に手を届かせ、ファンの喝采を浴びていた。
4位はエド・カーペンター(エド・カーペンター・レーシング)。彼の終盤の追い上げも凄まじかった。奮闘を続けていたサイモン・ペジナウ(シュミット・ハミルトン・モータースポーツ)やレイホールを抜いての4位フィニッシュ。最後のピットストップで右リア・タイヤ交換に少し時間がかからなければ、カナーンと表彰台をかけた激しいバトルができていたかもしれない。
佐藤琢磨は、エンジン交換をプラクティス後に行ったペナルティにより17番手スタート。序盤で11位まで順位を上げたが、レース中盤にして新品のエンジンにトラブル発生。114周目に2回目のピットストップを行った辺りからスピードの伸びが消え、問題解決のための対策が幾つもトライされたが、トラブルは拡大し最後はエンジンが壊れてのリタイアとなった。今週末はリタイアが少なく、24台出走中の23位となってポイント・ランキングは4位から8位へと大きく下がっている。
「最初のスティントまでのマシンはとても調子がよく、ピットストップでもポジションを上げました。リスタートも良くて、さらに上に行ける感触を掴んでいました。しかし、2回目のピットストップを終えた辺りからスピードが乗らなくなって、エンジンのマッピング変更とか、燃料のミクスチャー変更を何パターンも試しました。リタイアは悔しい。このところメカニカル・トラブルが続いていますね」と琢磨は悔しがっていた。今週末で連戦は一段落。1週間のインターバルでチームは体制を立て直す必要があるだろう。