今年もモータースポーツ・シーズン開幕が近づいて、関係者やファンはソワソワしていることだろう。ホンダがF1に参戦し、トヨタはWEC挑戦に加えてWRC参戦の準備も始めた。ニッサンもWECに出て来る。国内もGTやスーパーフォーミュラの話題で賑わっている。モータースポーツの人気がないと言われて久しいが、ここに来てまたぞろ人気が戻って来そうな気配がする。なんと言ってもホンダのF1復帰とトヨタのWRC参戦準備が大きな起爆剤になっているように思う。
こうして再び自動車メーカーがモータースポーツにやる気を見せて来たのは嬉しいことだが、どうも自動車メーカーのモータースポーツに対する姿勢は20年前、30年前と少しも変わっていないように思え、その点だけは私に不満を抱かせる原因になっている。もちろん、技術に関しては20年前、30年前と現在のそれは隔世の感があるので、技術面に於いては為すべきことは大きく変化している。量産車に環境対策エンジンが搭載されている現在、モータースポーツを戦うクルマの技術もその流れにそっぽを向くことはできない。FIAもF1やWECにはハイブリッドなどのシステム搭載を規則で決めた。こうした点は、20年、30年前とは違う点だ。
しかし、私が言いたいのは時代とともに進化する技術の変化ではなく、ソフトと呼ばれるPR、マーケティングなどを主体とした活動だ。こちら方面では各メーカーなりの活動が行われているが、それほど新味がない。いずれも個々の自動車メーカーの自社のルールに則って展開される活動ばかりで、より広く世の中の流れを汲んだ活動が為されていないように思うのだ。モータースポーツという対象を絞らないカテゴリーであるのに、その価値を高めることもせず、積極的に活用しようともしない。本当に残念でガッカリする。
では一体どうすればいいのだろう? 正直言って私も明確な答えは持ち合わせていない。今考慮中だ。自慢できるようなアイデアが浮かんできているわけではない。それでも、せっかくモータースポーツという、裾野が広く、歴史もあり、各界に力を持つ人が多く関わるこの分野だけに、なにか価値のある動きができないものか、毎日必死で考えている。
ただ、明確に今言えることがひとつだけある。モータースポーツ活動を続ける自動車メーカーが垣根を取っ払い、手を組んで、何かやって欲しいということだ。アイデアを出し合って、少しでも世の中のためになることができればこれほど嬉しいことはない。例えばFIAの行う様々な世界規模の交通安全運動を支援したり、食糧危機の国への支援に乗り出したりすることに価値を見つけることができはしないか。そこに日本の自動車メーカーが手を繋いで作りあげたモータースポーツを基盤とする組織の存在があるなら、喜ばしいばかりだ。
F1テストの模様やホンダへの叱咤激励の原稿を期待した人には申し訳ないが、今回は私がずっと持ち続けている希望について書いた。私ひとりでは何もできないが、自動車メーカーがアイデアを出し合えば、やらなければならないことが見つかるはずだ。クルマを売るだけではなく、またモータースポーツで勝敗に一喜一憂するだけではなく、せっかくモータースポーツというフィールドで同じ目標を持つ者同士、ぜひ価値ある活動を始めようではないか? 一体何を? それを考えるのだって楽しいじゃないですか。
赤井邦彦(あかいくにひこ):世界中を縦横無尽に飛び回り、F1やWECを中心に取材するジャーナリスト。F1関連を中心に、自動車業界や航空業界などに関する著書多数。Twitter(@akaikunihiko)やFacebookを活用した、歯に衣着せぬ(本人曰く「歯に衣着せる」)物言いにも注目。2013年3月より本連載『エフワン見聞録』を開始。月2回の更新予定である。
