久しぶりのエフワン見聞録ですが、F1も夏休みだったので大きな動きはなくてよかった……と思ったら、夏休み明けのベルギーGPで色々と動きがあったようですね。
何がどう動いたのか? 話題はふたつ。ひとつはメルセデスAMGのルイス・ハミルトンとニコ・ロズベルグの接触にまつわる色々。ふたつめはケータハムの小林可夢偉とアンドレ・ロッテラーの交替。F1界全体を見れば、メルセデスAMGの騒動の方が大きな話題と言えるでしょう。だってふたりはまさに選手権をリードしてチャンピオン争いに飛び込もうとしている矢先。このふたりが接触してハミルトンのタイヤがバースト、ピットへ入り大きく遅れてしまったのだから、注目されるのは当たり前と言えば当たり前だ。
しかし、ふたりの接触がなぜこれほどまでの騒動になってしまったのか? それはメルセデスF1チームのマネージメントが、「接触はロズベルグに非がある」と公に言ってしまったせいだ。こんなチームのマネージメントってあり? ふたりとも同じチームのドライバーで、ふたりとも勝利を重ね、ふたりともタイトル獲得の可能性があるドライバーですよ。そのふたりの接触を片方のドライバーのせいにしてしまった。これはドライバーというよりマネージメントの大失態でしょう。
実際に接触時の映像を見ても、ロズベルグが故意にぶつけたようには、私にはとても思えない。そもそもチームメイトのタイヤをパンクさせようとしてぶつけるか? そんなに狙った運転が出来るか? ましてやぶつけると、何とかボードとかかんとかウイングとかゴチャゴチャと空力部品が付いている今のF1では、自分のクルマがダメージを被るのは避けられない。更に言えば、チームメイトを潰して勝っても気持ちが良くないばかりか、禍根を残すこと必至だろう。ロズベルグだってそこまで馬鹿じゃないでしょう。
ということは、「故意にぶつけやがった」と言ったハミルトンの方がよっぽど馬鹿に違いない。そして、ぶつけられた彼がロズベルグを攻めると言うことは、逆の立場を考えてみた時、「自分はロズベルグにぶつけるね」と言ってるようなもんだ。そして、そのハミルトンの言葉を信じたチームのマネージメント。どうかしているよ。
ハミルトンだって本当にぶつけられたんだと思っているなら、レースが終了したらロズベルグをぶん殴るぐらいしたらどうだ? 直接ロズベルグに言う前にインタビューでロズベルグを非難するなんて……。
現実には、レース後の金曜日、メルセデスのマネージメントとふたりのドライバーが話をし、ロズベルグは判断を誤ったとハミルトンに謝った。まあ、大人の判断だ。だが、接触を招いた判断ミスを謝ったのであって、ハミルトンが公に「ロズベルグは故意にぶつけた」と言った事実については納得いかないはずである。また、チームのマネージメントがロズベルグを非難した点に関しても納得はしていないだろう。会社の上司に公に「お前が悪い」と言われれば、社員は「そんな会社は辞めてやる」と考えるだろう。ロズベルグはそこまでの判断はしていないが、内心忸怩たるものがあることは明白だ。
イタリアGPを前に、一応チーム内は丸く収まったように見えるが、これから先、シーズンが終盤に入ると、ふたりのドライバー間の確執は激しさを増すはずだ。ふたりに自由に戦わせるという方針を採ったメルセデス。その結果がかつてのアイルトン・セナとアラン・プロストの関係のようにならないとは限らない。そうなった後では遅いが、チームオーダーを出せばそれどころじゃ済まなくなるだろう。メルセデスAMGのマネージメントは頭が痛いだろうが、優秀なドライバーをふたり抱えたチームの宿命だと諦めるしかない。
おっと、今回はケータハムに関して書くスペースがなくなった。すぐに追いかけるように次回を書くので暫くお待ちを!
赤井邦彦(あかいくにひこ):世界中を縦横無尽に飛び回り、F1やWECを中心に取材するジャーナリスト。F1関連を中心に、自動車業界や航空業界などに関する著書多数。Twitter(@akaikunihiko)やFacebookを活用した、歯に衣着せぬ(本人曰く「歯に衣着せる」)物言いにも注目。2013年3月より本連載『エフワン見聞録』を開始。月2回の更新予定である。
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