7年ぶりにF1復帰したホンダにとって、ハリケーンが接近する状況下で開催されたアメリカGPは、ある意味で最も苦労を強いられた。

 まずフリー走行1回目がウエットコンディションとなり、2回目のフリー走行は中止。土曜のフリー走行3回目もウエットで、午後の予選は延期。日曜の午前中に行われた予選も雨で、Q3は中止。マクラーレン・ホンダの2台がサーキット・オブ・ジ・アメリカズを走ったのは、スタート前までに86周。同じように金曜は雨にたたられ、フェルナンド・アロンソがQ1で敗退した前戦ロシアGPでさえ、レースまでに2台で93周を走っていることを考えれば、いかに今回わずかな走行しかできなかったかわかる。

「雨という条件は他のチームも一緒ですが、ライバルたちのマシンは昨年からの発展形なので、車体に関するデータは昨年のものを参考にできる。しかしマクラーレンは今季の中盤からデザインを一新しているので、昨年と比較しにくいんです」とホンダの新井康久F1総責任者は説明する。

 しかもアロンソは今季最後のトークンを使用してICEを改良した「マーク4」のパワーユニットを搭載、ジェンソン・バトンはハンガリーGPで投入した「マーク3」を選択。2台でセットアップが異なれば、パワーユニットの使用方法も変わってくるのだ。

 だが、不規則なスケジュールで走行データが不足していたにもかかわらず、ホンダは予選で2台そろってQ2へ進出。いまだQ3入りは果たせていないが、マクラーレン・ホンダが2台ともQ2に行けたのは、これで4回目だ。さらにレースでもバトンが5番手を走行、アロンソも6番手まで浮上し、ともに入賞圏内を走行することができた。

 新井氏は「難しいコンディションにもかかわらず、上手にレースを進めていた」と、ドライバーを評価。しかし、レース終盤にバトンはタイヤに苦しみ、アロンソは燃料系(インジェクター)のデータ上に不具合が発見され、出力が落ちてペースダウンするしかなかった。そのためバトンは7位でフィニッシュ(カルロス・サインツJr.のペナルティにより正式結果は6位)。アロンソは最終ラップで11番手に後退して無得点に終わった。

「トラブルが起きる前までは、とてもいいレースを行っていただけに残念。でもパフォーマンスは発揮できたと思います。研究の成果を出せたことには満足。問題が出たフェルナンド(アロンソ)のパワーユニットは数日のうちにデータを分析し、万全のタイミングでエンジンの準備を整えます」

 連続開催となるメキシコGPは、23年ぶりに復活する伝統のグランプリというだけでなく、かつてホンダが1965年にF1初優勝を記録した場所でもある。現状を考えると過大な期待は難しいが、どんなパフォーマンスを披露できるか楽しみだ。

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