「今回はパワーユニットも含めたクルマのセットアップが土曜日の午前中まで非常にうまくいっていたので、予選に向けた期待も大きかった」と、ホンダの新井康久総責任者は言う。
予選前に行われたフリー走行3回目では、フェルナンド・アロンソが8番手のタイムをマーク。順位だけではなく、実際マシンの状態は良かった。今回マクラーレンは新しいフロントウイングとタイトになったボディワークを持ち込んでいる。「ガードレールのないモナコ」と呼ばれるハンガロリンクは、ダウンフォースの有無がラップタイムに大きく影響する。特にコーナーが連続するセクター2ではフロントのダウンフォースが重要となり、マクラーレンが投入した新しいフロントウイングは大きな武器となったはずだ。
ところが予選に入ってから、問題が発生する。ジェンソン・バトンはQ1で1回目のアタックを終えた時点で7番手のタイムを出していた。だが、この時点で14人のドライバーがミディアムタイヤを履いていたため順位は大きく変動する可能性があった。そこでバトンは2セット目のソフトタイヤを履いて、2回目のアタックに出る。このときバトンはエンジニアからの指示でステアリングのスイッチを操作。それによって、バトンは2回目のアタックで回生エネルギーのパワーを得られなかった。
「非常に複雑なシステムになっていて、ステアリング上のスイッチの何かと何かを、ある設定で組み合わせて使用したため問題が発生してしまったのではないか。MGU-Kのアシストが機能が、まったく効かなくなってしまいました」と新井総責任者は説明する。バトンは最も回生エネルギーを使用するストレートで、1回目のアタック時より約18km/hも遅く、まったく勝負にならずQ1で敗退した。
残るはアロンソだけとなったが、こちらにもアクシデントが発生。Q2アタックを開始する直前、最終コーナーへ差しかかったところでストップしてしまったのだ。
「シャシー全体へつながっていく電源系のメインコネクターがルーズになってしまい、走行中にパワーがシャットダウンしてしまった。レースに向けて同じ問題が起きないように、これから対策するつもりです」
トラブルがなければQ3を狙う戦いができていたと思われるだけに、非常に悔やまれる。レースに「たら・れば」はないが、もしトラブルがフリー走行の時点で起こっていれば……。そう思わせるほど、ハンガリーGPのマクラーレン・ホンダは予選の前までは順調だった。