4月28日火曜日発売の『auto sport(オートスポーツ)』6月号では、新世代F1マシンのメカニズム読み解きを特集しています。日本GPで明らかになったエネルギーマネージメントの実態や、現行規定で風洞を回した経験を持つ空力開発者による各26モデル・エアロの勘どころなど内容盛りだくさんなのですが、そのなかから、アストンマーティンの先鋭的フロントサスペンションの読み解きを先出しします。
■ステアリングラック位置がタイヤ後端で低効率
リンク・レイアウトの読み解きに取り掛かったところで、「どう動くのか?と首を傾げてしまった」(望月※本読み解き企画参加メンバー)。アッパーアームの後側レッグがコックピット脇まで伸びているのは、これを整流フィンとして使いつつ、アンチダイブ・ジオメトリーを設定するとこの位置に来るのは理解できる。
問題はステアリング機構。ギヤボックス=ラックがタイヤ後縁に重なるほど後方にあり、その端部からホイール前内側の通常の位置にあるナックルアームへ、斜め前に向かってタイロッドを伸ばしている。つまりステアリングを操作してラックが横に動いても、タイロッドを斜め方向に押し引きするので、作動効率がおそろしく悪く、機構学として非常識。正確に機能するとは思えない。
実際、オンボード映像でドライバーの手が細かく動いても車輪にその動きが現れない状況が見受けられた。ここがわかるとタイロッド直後・斜め平行なのがロワーアームの後側レッグ、前側レッグはモノコック前面固定で左右を突っ張り棒で結ぶ。その高さは車輪中心高さより上で、タイロッド前端はその前まで伸びる。上下アームとも分離リンク・仮想転舵軸。サスペンション設計者として「ありえないミス」を犯している、失敗作である(両角岳彦)。
■レイアウトが斬新かつ攻撃的。しかし作動に問題がありそう
テキストだけで読み進めるとやや難解ですが、写真、構成説明図をあわせてみることで指摘内容は理解できます。前提として規定変更によりフロアがベンチュリーからステップドボトムに変わり、向きが逆のバージボードのような「フロアボード」装着が義務付けになったこともあり、車両の横からフロアに空気が取り込みにくくなったことで車両前側からできるかぎりフロアに空気を取り込みたいということがあります。
そのためにフロントサスペンションのアーム類は整流翼としてフル活用したい。流路確保や整流のためにもサス形式もプルロッドからプッシュロッドに多くのチームが変更してきました。ご存知のとおり、アストンマーティンにはエイドリアン・ニューウェイが加入。エアロ最優先でサスペンション設計の指示が下ったことは想像に難くありません。
アッパーアームのリヤレッグが後ろ下がりに長く伸びているところなどは、シロート目に大変攻撃的でカッコよく見えます。ロア側に注目すると、ロア側リヤレッグに沿う形でタイロッドが車輪前部へ伸びており、この2本……というより2枚が完全な翼形状一体となってウイングを形成。これも大変カッコいいのですが、ステアリングの作動を考えれば力学的に欠陥とすら断言できるというのが上記内容です。
タイロッドにレバー比が生まれてしまっているのだったら、路面からの入力を拡大してしまい、ステアリングの振動もこれが原因では!? と妄想したところ「それはない」と両角氏には仮説を却下されてしまいました。
■片付け名人はマクラーレン。マルチリンクが流行
空力的要請と運動力学の両立という命題にスマートに解決策を発見しているのがマクラーレン。タイロッドの車輪側取り付け点がフォーミュラとしては大変ユニークであることが今回の企画で判明しました。
引用本文にある「分離リンク・仮想転舵軸」というのは、ダブルウィッシュボーンの上下アームがさらに分割されて上下合計3本だったり、4本だったり他のチームも採り入れている形式で、量産車であればマルチリンクと呼ぶような方式。ホイールが18インチとなりホイール内径が広がっているものの、むしろそのことでジオメトリーとして理想の取り付け点を車輪側で確保するのが難しくなり、その対応策として流行しているようでした。
突然のインターバルとなった4月。ぜひ本誌をお手に取り、じっくり26マシンを研究してみてください。それにしても鈴鹿の130Rが充電区間。シケイン飛び込みも回生でフルブレーキングなしという寂しさは、FIA様になんとか解消していただきたいところです……。
●『auto sport』2026年5月号 No.1619
発売日:2026年4月28日(火)
特別付録:GT500マシン大判カード
特別定価:1400円(税込)
三栄オンラインストア:https://shop.san-ei-corp.co.jp/shop/g/g0121172606/


