7年ぶりにF1へ戻ってきたホンダの、復帰1年目を締めくくる最終戦は今シーズンを象徴するような戦いだった。
フェルナンド・アロンソは好スタートを見せ、前方グリッドのセバスチャン・ベッテルとフェリペ・ナッセの2台をまとめて抜こうと1コーナーへ進入していった。だが、1コーナーへのブレーキングでナッセと接触。コントロールを失ったアロンソは、そのままパストール・マルドナドのマシンに激突した。
「フロントタイヤとフロントウイングにダメージを負った」(新井康久ホンダF1総責任者)アロンソは、1周目に緊急ピットイン。いきなり最後尾まで順位を落とした。
新井氏は「いいスタートを切ったのに、あの事故で事実上レースを失った」と振り返る。アロンソはタイヤとフロントウイングを交換してレースを再開したが、直後にマルドナドとの事故の責任を問われ、レース審議委員会からドライブスルーペナルティを科せられてしまう。さらに大きく遅れたためリタイアも考えられたが、アロンソは走り続けた。
「レース終盤にはタイヤを履き替えて、ファステストラップを狙いにいくなど、最後まであきらめない走りを見せた。途中で車体にちょっとした不具合が出て、きちんと回生システムが機能しない状況に陥り、少しヒヤヒヤした。それでも最後まで走りきって、しっかりとシーズンを締めくくった」
アクシデントに見舞われたのはアロンソだけではなかった。1回目のピットイン時にジェンソン・バトンがピットアウトしてきたバルテリ・ボッタスと接触。これはボッタスに非があるとして、5秒のタイムペナルティが出た。
「幸いジェンソンのマシンに大きなダメージはなく、クルマのバランスにも満足していたようだ。無線でも『レースしていて楽しい』と、ずっとしゃべっていたくらい調子が良かった」と、新井氏。
13位でチェッカーを受けたバトンは、レース後ひとつ前でフィニッシュしていたマックス・フェルスタッペンが20秒のタイム加算ペナルティを与えられたため、最終結果は12位となった。
「順位的には残念だが、クルマの仕上がりとしては良かった。レースではウイリアムズやトロロッソとやりあうことができた。我々のマシンがパッケージとして進歩が見えたことは評価できる」
長い1年を終えたホンダ。しかし戦いは、これで終わったわけではない。2016年へ向けてパワーユニットを改良する研究所での戦いに終わりはない。
「シーズン中にライバルとどれくらいの差があるかはわかっていたので、追いつくための手立ては、すでに着手している。この冬はかなりハードワークになると思うが、きちんとした体制で来シーズンを迎えたい」
そう言って、新井総責任者は最終戦を終えて盛り上がるヤス・マリーナ・サーキットを静かに去っていった。