復活したマクラーレン・ホンダの活躍を甘口&辛口のふたつの視点からそれぞれ評価する連載コラム。レースごとに、週末のマクラーレン・ホンダのコース内外の活躍を批評します。今回は今シーズン初めて2台揃って予選Q2進出を果たした第5戦スペインGPを、ふたつの視点でジャッジ。
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甘口編
ノートラブルのPUは確実な進歩
バトンのコメントに込められた心構えにも希望
開幕戦オーストラリアGPから第4戦バーレーンGPまでのフライアウェイを終えたマクラーレン・ホンダは、ヨーロッパラウンド開幕戦のスペインGPに向けて、マシンのカラーリングを一新しただけでなく、アップデートパーツを持ち込んだ。しかし、変わったのはマシンだけでない。
ウインターテストで思うように走り込めなかったホンダにとって、開幕4戦は次から次へと襲うトラブルへの対処に追われ続けた。1つトラブルを解決すれば、別のトラブルが発生していた様子を新井康久総責任者は、「まるで『モグラ叩き』をしていたようだった』と表現した。
しかし、バーレーンGPの後、F1はスペインGPまでに3週間の時間があり、序盤戦で起きた問題をしっかりと検証することができた。それが、アップデートパーツの投入につながっている。すでに「モグラ叩き」が終わっていることは、3日間でパワーユニットに致命的なトラブルが一度も発生しなかったことでもわかる。そして、予選では今シーズン初めて、2台そろってQ2へ進出した。開幕4戦に比べ、マクラーレン・ホンダはスペインGPで確実に進歩していた。
だが、レースでは思うような成績を残すことができなかった。フェルナンド・アロンソはバイザーがリヤブレーキのダクトを塞いだためにブレーキが効かなくなるトラブルに見舞われてリタイアを余儀なくされた。一方、ジェンソン・バトンはスタート直後からリアのトラクションに苦しみ、「マシンをドライブするのが怖わかった」(バトン)という状況に陥り、ライバルたちから大きく離されて16位という結果に終わった。
スペインGPに来る前、マクラーレン・ホンダの2人のドライバーは、それぞれ「ポイント獲得」を目標にし、カタロニア・サーキットに乗り込んできていただけに、レース後の落ち込みようはひどかったに違いない。バトンが一部のメディアに、ネガティブなコメントを発していたのも理解できる。
そして、そこにマクラーレン・ホンダの希望を感じた。まずは相手を尊重するために、お互い言いたいことを控え、遠慮する時期はもう終わっていいころである。これからは前進するために、言わなければならないことは、言い難いことでもハッキリというべきである。そのバトンが発したコメントをすべてではないが、自らのリリースに使用したチームを評価したい。
またパワーユニットに問題が起きなかったことに安心せず、予選でQ3へ進出できなかった事実をしっかりと受け止めていたホンダの姿勢も評価したい。サーキットのどの部分でエネルギーをチャージし、どこで使用するのがもっとも効率が良く、かつラップタイムに大きな影響を与えるのか。そして、そのためには空力のセッティングをどのように調整しておくことが効果的か。
現在のF1は単純に馬力やダウンフォース量だけの戦いではなく、100kgという限られた燃料でいかに早くチェッカーフラッグを受けるかという頭脳戦である。それには、ホンダとマクラーレンがより密接な関係を築く必要がある。
スペインGPでのマクラーレン・ホンダは、マシン同様、スタッフたちの心構えもアップデートされていたような気がする。
辛口編はF1速報有料サイト(http://f1sokuho.mopita.com/free/index.php?f=asweb)でご覧下さい。