復活したマクラーレン・ホンダの活躍を甘口&辛口のふたつの視点からそれぞれ評価する連載コラム。レースごとに、週末のマクラーレン・ホンダのコース内外の活躍を批評します。今回は今シーズン初めて2台完走を果たした第3戦中国GPを、ふたつの視点でジャッジ。
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甘口編
改良する余地と技術力が見えた週末
オーストラリア 0.946秒
マレーシア 0.323秒
中国 0.165秒
この数字は予選Q1でのマクラーレン・ホンダの上位のドライバーと15位までのギャップである。つまり、Q2進出まで、あとどれくらいだったかを示す数字だ。この数字が、ホンダの進化を如実に表している。
もちろん、タイムには空力のアップデートやセットアップの状況も関係しているから、この差がすべてホンダの努力だと言うつもりはない。だが、開幕戦から中国GPまでの約1カ月間で、エアロダイナミクスだけでコンマ8秒もタイムを上げることは不可能である。つまり、この数字の多くはホンダのパワーユニットの上がりしろだと言ってよい。
予選だけではない。中国GPでは日曜日の決勝レースでもこんなシーンが見られた。レース終盤の39周目に、ジェンソン・バトンがロータスのパストール・マルドナドをオーバーテイクしたのである。しかも、ブーキングやコーナーリング中ではなく、バックストレートで追い抜いたのだ。
新井康久ホンダF1プロジェクト総責任者は、「DRSやタイヤなど、いろんな要因があるので、あのオーバーテイクシーンが本当の力を映し出しているわけではない」と謙遜していたが、ニコ・ロズベルグがチームメートのルイス・ハミルトンを抜けなかったように、いくらDRSを使用しても速くなければオーバーテイクは実現しない。
さらにタイヤも、あのときはどちらもミディアムの新品タイヤを装着していた。しかも、先に交換していたのはバトンのほうで、マルドナドのほうが1周フレッシュなタイヤを履いていた。それでもバトンはマルドナドを抜いたのだから、あのオーバーテイクは運でもなんでもなく、実力である。
中国GPでは速さだけでなく、もうひとつ貴重なものをホンダは手に入れた。それは信頼性である。2台そろっての完走は、もちろん今シーズン初めてのことだった。現在のパワーユニットは開発が自由に行えない。だが、パフォーマンスアップにつながらない信頼性向上のためであれば、FIAに承認を得た上で、改良することは可能である。
さらに、開発が凍結されている以外の部分の改良や補充は基本的に自由である。つまり、現行レギュレーションの中でも、改良する余地はいくらでも残されているのである。したがって、マクラーレンだけにパワーユニットを供給しているホンダは、マクラーレンのマシンに搭載することをだけを考えて、改良できるメリットがあり、レッドブルとトロロッソに供給しているルノーがなかなかトラブルを修復できないのも、そのためだ。
もちろん、1チームだけに供給しているデメリットもある。それは走行データの圧倒的な不足。しかもホンダは今年、参戦したばかり。ライバルに対して1年間、19戦分の遅れがある。しかし、そのような状況にもかかわらず、予選でQ2進出までコンマ2秒を切り、レースではオーバーテイクするようになったのである。それは裏を返せば、ホンダの技術力がしっかりとしている証拠。
次のグランプリの舞台であるバーレーン・インターナショナル・サーキットは、エンジンに厳しいサーキットのひとつと言われている。1戦後に調子を上げているホンダにとって、今は不安よりも、チャレンジする気持ちのほうが大きいのではないだろうか。
辛口編:運用面でも予選の戦い方を知らないホンダ
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