復活したマクラーレン・ホンダの活躍を甘口&辛口のふたつの視点からそれぞれ評価する連載コラム。レースごとに、週末のマクラーレン・ホンダのコース内外の活躍を批評します。アロンソ+マクラーレン・ホンダのデビュー戦となった第2戦マレーシアを、ふたつの視点でジャッジ。
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甘口編
速さ、信頼性より大事なもの
希望が見えた、アロンソの気迫の走り
7年ぶりの復活の一戦となったメルボルンでのレースを完走したホンダにとって、マレーシアGPでの2台そろってのリタイアは、リザルト的には一歩後退したかのように見える。しかし、ホンダの新井総責任者は、「メルボルンに比べて、さらに数段、進化していることを確認した」と、評価した。
「メルボルンではジェンソン(バトン)のクルマ1台だけでしたが、最後まで走りきることはできた。でも、あまり遅くペースでレースになっていなかった。それで、マレーシアGPまでの2週間でさまざまな対策を講じ、それがセパンではきちんと機能していることが確認できた。おそらく、レースでマクラーレン・ホンダがバトルしているシーンを皆さんも今回、初めて見たことと思います。それが最大の収穫です」
しかし、マレーシアGPでホンダにとって、もっとも大きな収穫は、もうひとつあったと私は感じている。それは、フェルナンド・アロンソの復活である。というのも、アロンソの事故の原因について不明な点が残っていたため、なかには「あまりに遅いマクラーレン・ホンダにアロンソが愛想を尽かしたのではないか?」とささやく声が少なからずあったからである。
生死をかけて戦うレーシングドライバーにとって、ステアリングを握るうえで大切なことはチームとの信頼関係だ。もし、それが事故によって失われていたとしたら、アロンソがマクラーレン・ホンダのマシンに乗って100%のポテンシャルを出すことは不可能であり、それではアロンソがマクラーレン・ホンダに移籍してきた理由もなくなってしまう。
ところが、アロンソはマクラーレン・ホンダを信頼していた。木曜日にはコース下見をマクラーレンやホンダのエンジニアと一緒に行い、さまざまなコミュニケーションを図っていた。気温約30℃の中、1周5km以上を30分ほどの時間をかけて歩いてピットレーンに帰ってきたアロンソのシャツは、汗で濡れていた。
アロンソにとってセパンは10年以上も走り続けているサーキットで、優勝もしている走り慣れたコース。それでも猛暑の中、下見に出たのは、冬の間、失ったホンダのスタッフとの時間を少しでも取り戻したかったからではないだろうか。予選後の会見でも、こんなメッセージを新井総責任者の前で語っていた。
「メルセデスを倒すためには特別な何かが必要だ。彼らのコピーをしたり、同じ道を追いかけていても、永遠に追い抜くことはできない。このチームには自分たちの道を開拓し、別の方法で頂点を目指せるだけの優秀なエンジニアがたくさんいる。だから、いまは厳しい時間を過ごしているが、私は彼らと一緒に荒波へ航海に出ることを楽しんでいる」
アロンソのホンダへの信頼は、決して言葉だけではなかった。レースで見せた走りが雄弁に物語っていた。スタート直後の2コーナーでセルジオ・ペレスを差したアロンソは、ピットストップで再び前に出たペレスを追いかけ、14周目にオーバーテイク。その後もトロロッソ勢、レッドブル勢と対等な走りを披露した。もし、2月のバルセロナ・テストでの事故によって、アロンソがチームへ不信感を抱いたままだったら、そんな走りはできない。
21周目にリタイアしたときも、データに不具合を見つけたチームが無線でアロンソにピットインを指示。その最後の瞬間まで、アロンソは限界でホンダのパワーユニットを使い続けていた。
「この週末は私の予想以上の結果だった。一番ポジティブだったのは、マクラーレン・ホンダのマシンがほかの一部のチームとすでに対等に走っていたことだった。レース中盤にはレッドブルに追いつくこともできた。開幕前、私たちの最初のステップはまずライバルたちに追いつくことだったけど、2戦目にして早くもそれをクリアすることができた。うれしいサプライズだ」
メルボルンから2週間でここまで立て直してきたホンダ。高温多湿のマレーシアGPで進化を遂げたホンダの2週間後を楽しみにしているのは、アロンソだけではない。
辛口編:「レースができた」と言っても……
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