ル・マン24時間は1日、14日~15日の本戦を前にテストデーを迎え、アンソニー・デイビッドソン/ニコラス・ラピエール/セバスチャン・ブエミ組の8号車トヨタTS040ハイブリッドが一日を通してのトップタイムをマークした。2番手には7号車TS040ハイブリッドが続き、トヨタ勢がトップ2を占める形でテストを終えている。
曇り空に覆われた5月31日の夕方から天候が回復し、ようやく晴れ間が戻ってきたル・マン。1日には、午前・午後の8時間に渡って、テストデーのセッションが行われた。この日は終日、晴れ。夕方近くになって空には再び雲が広がったが、各チームともに、本番のレースに向け、ドライコンディションの中で作業を進めることができた。
午前9時より、気温16度、路面温度19度というコンディションの中で始まった1回目のセッションは、次第に気温・路面温度ともに上昇。チェッカーが振られた午後1時の段階では、気温が20度、路面温度は31度となった。
最初のセッションで、まだスリッピーな路面ながら序盤から好タイムをマークしたのが、スパに引き続きル・マンでも空力テストを続行するとしていたトヨタ勢。中でも7号車に最初に乗り込んだ中嶋一貴は、次々にタイムを伸ばしていった。
一方、他の陣営も、クルマのバランス取りやセットアップのための作業をこなすと同時に、タイヤテストも実施。路面コンディションが良くなってくると、次第にタイムアップしていく状況となった。そして、4時間のセッションが折り返したあたりで、それまでのトップタイムを書き換えたのが、8号車トヨタのデイビッドソン。デイビッドソンは、3分25秒902というタイムをマークしてくる。今年、ル・マンは一部コースが改修。特に最終シケインの角度がきつくなり、ショートカット不可能な高い縁石が作られたため、ラップタイムは昨年より落ちる方向だろうと言われていたが、早くも昨年アウディがマークしたPPタイム、3分22秒346まで3秒あまりに迫る。
ちなみに、昨年のトヨタの予選ベストタイムは8号車TS030ハイブリッドがマークした3分26秒654。つまり、この時点でトヨタは去年以上のパフォーマンスを見せた格好だ。
その後、1回目のセッション終了まで1時間となったところで、このタイムを上回ってきたのは、3号車アウディR18 e-トロン・クワトロに乗るマルコ・ボナノミ。8号車トヨタも、ブエミが3分25秒881までタイムを伸ばす。だが、ボナノミは、チェッカーと同時にさらに大きくタイムアップ。3分23秒799というタイムを叩き出し、8号車トヨタを上回った。3番手には、序盤に中嶋一貴がベストタイムを出した7号車トヨタ。以下、20号車ポルシェ919ハイブリッド、2号車アウディ、1号車アウディ、14号車ポルシェというオーダー。事前の評判では、ポルシェが他の2メーカー以上に速さを見せるのではないかとも言われていたが、その評判通りとはならなかった。
1時間のインターバルを経て、2回目のセッションが始まったのは、午後2時から。この時点で気温は21度、路面温度は35度と、この日最も温かなコンディションとなる。セッション最後は曇り空となり、気温20度、路面温度30度まで低下したが、終始ドライコンディションは変わらず。テストには最適なコンディションのまま、時間が流れて行った。
さて、この午後のセッションに入ると、わずか6周目に14号車ポルシェが3分24秒692と、午前中の自己ベストを3秒ほど上回ってくる。ところが、その直後、ピットに戻った14号車はターボから出火。それをリペアして、ほどなくコースには戻ったが、その後タイムアップすることはなかった。
これに対して、好調ぶりを見せつけたのは、8号車トヨタ。セッション開始から30分余りというところで、ブエミが3分23秒014と総合トップタイムを書き換えると、そのポジションをキープし続ける。その後、セットアップメニューやタイヤの比較などを行いつつ、ラピエール、デイビッドソンとつなぎ、各セクターで速さを発揮。仕上がりの良さを見せた。
さらに、セッションが終盤に差し掛かり、一貴がニュータイヤでのアタックを行った7号車トヨタは、3分23秒156までタイムアップ。午前中に3号車アウディがマークしたタイムを上回ってくる。燃料はそれほど軽くなかったというものの、2周続けてアタックを行った一貴。だが、いずれも最終セクターでトラフィックにつかまってしまい、僚友8号車のタイムを上回ることはできなかった。それでも、結果的にはトヨタがワンツーでテストデーを打ち上げている。そのトヨタは今回、5月中旬にスパで試したという新たな空力パーツをル・マンでもテスト。ドラッグ低減目的で投入されたそのパーツも、タイムアップに寄与していたようだ。
そのトヨタに続いたのは、アウディの3号車と1号車。ただし、アウディは2回目のセッションに入ると、主にロングランテストを実施。この2回目のセッションは、後半に入るとクラッシュやコース上に落ちたデブリの回収のため、4回も赤旗が出され、最後も赤旗のまま終了となったが、3台はともに淡々とメニューをこなしていった。その中で、それぞれユーズドタイヤを使用して自己ベストをマークしてきている。アベレージのラップタイムでも、トヨタと大差をつけられることはなさそう。
2号車に乗るアンドレ・ロッテラーによると、「ロングランの間に、トヨタの後ろに付いて走るチャンスがあったけど、そこでは僕らのクルマの方が速かったよ。もちろんコーナーの立ち上がりでは、トヨタのパワーの方が大きくて、オーバーテイクは無理だったけど。でも、思っていたより差は小さい。ここに来る前は、もっと大きな差をつけられるんじゃないかって予想していたんだけどね」とのこと。対するポルシェの平均ラップタイムは、それに比べるとかなり遅め。こちらはやはり16年ぶりのル・マン復帰ということもあり、経験の面でアウディやトヨタの後塵を拝している雰囲気だった。
その他のクラスに目を移すと、LMP2クラスでは、G-ドライブ・レーシングの26号車モーガン・ニッサンが総合トップ。これにマーフィー・プロトタイプスの48号車オレカ03・ニッサン、シグナテック・アルピーヌの36号車アルピーヌA450・ニッサン、OAKレーシングの35号車リジェ・ニッサンと続く。日本ともゆかりがあるKCMGの47号車オレカ03・ニッサンは、クラス5番手でテストを終えた。また、日本人女性として唯一参加している井原慶子が乗るラルブル・コンペティションの50号車モーガン・ジャッドも順調にテストを消化。結果としてはクラス16番手に留まったが、井原自身、1年ぶりのル・マンをトラブルフリーで連続周回した。
LM-GTEクラスでは、フレデリック・マコウィッキが2回目のセッションでトップタイムをマーク。ポルシェ・チーム・マンタイの92号車ポルシェ911 RSRが首位に立ったまま、テストを締めくくった。それ以下は、プロクラスととアマクラスが入り乱れる混戦模様。13㎞以上もあるコースにもかかわらず、各車のタイム差も非常に小さく、本番でも至る所で接近戦が演じられることとなりそうだ。
プライベーターの日本チームとして、今年唯一参戦しているLM-GTEアマクラスのチーム・タイサンは、中野信治が70号車フェラーリ458イタリア GT3の基本的なマシンセットアップを仕上げると、本番で乗り込むジェントルマンドライバーのマーティン・リッチが慣熟走行。仕上がりに納得が行ったところで、早目に走行を打ち切った。来週には、中野からバトンを受け継ぐ形で、ジェームス・ロシターがエース役を務めることになる。
今年のル・マン24時間は11日、12日に予選が開催。決勝レースは14日~15日に行われる。