「いま私たちに大切なことは、何位かということではなく、やるべきことができているかどうか。トップとのタイム差やポジションうんぬんを言っている場合じゃない」

 F1開幕戦オーストラリアGP、初日を終えたジェンソン・バトンは、そう語った。

 新生マクラーレン・ホンダとして、初めてのグランプリ。記念すべき船出となるはずの金曜日は、多難のスタートとなった。まず、午後12時30分からスタートしたフリー走行1回目で、ケビン・マグヌッセンのマシンの吸気系のコントロールデータに不具合が見つかる。すぐにバトンのマシンを確認すると、同じ不具合が発見された。そこでホンダは2台をガレージに呼び戻し、データを徹底的に見直す決断を下した。1回目のフリー走行でバトン6周、マグヌッセン7周に終わったのは、そんな理由からだった。

 2回目のフリー走行までの2時間半のインターバルで、データを修正したホンダは、フリー走行2回目に同じパワーユニットで臨む。ひとつの問題が解決すると、また新たな問題が待っている。それが今のホンダの状態だ。問題なく走行できるようになると、今度は速く走るために重要な回生エネルギーシステムのマネージメントがうまく機能していないことが判明した。

 現在のF1はMGU-KとMGU-H、ふたつの回生エネルギーシステムを、コースのどの部分で、どれだけ使用するかが鍵となる。もちろん、それらを使用するためには事前にエネルギーを回収しておかなければならないことは言うまでもない。特にブレーキによってエネルギーを回生するMGU-Kはブレーキ・バイ・ワイヤ(BBW)を、いかに制御するかが重要となる。

 ところがブレーキングは、サーキットの路面のミュー(摩擦係数)によって異なり、ドライバーによっても好みが違う。したがってBBWの制御はエンジンメーカーが勝手に決めるわけにはいかず、エンジニアとドライバーを含めて、調整は時間を要する作業となる。

 しかしオフシーズンテストで、それ以外の問題に直面していたマクラーレン・ホンダは、この作業が後回しになっていた。しかもオーストラリアGPの舞台アルバートパーク・サーキットは、最終テストが行われたスペイン・バルセロナとは、まったく特性が異なる。ふたりのドライバーが「アンダーステアに苦しんだ」と言っているのも、おそらくBBWの制御がサーキットとドライバーの好みに適合していなかったからだろう。

 この日、バトンが記録した1分31秒387は、トップのニコ・ロズベルグから3.69秒差の13位だった。しかし、それについて言う前に、やるべきことは、まだたくさんある。今シーズン参戦しているドライバー中、最多参戦数を誇るバトン。その大ベテランがセッション後に報道陣に語った言葉は、実は復帰してきたホンダに言いたかったことではなかったのだろうか。

本日のレースクイーン

平野由佳ひらのゆか
2025年 / スーパーGT
Pacific Fairies
  • auto sport ch by autosport web

    RA272とMP4/5の生音はマニア垂涎。ホンダF1オートサロン特別イベントの舞台裏に完全密着

    RA272とMP4/5の生音はマニア垂涎。ホンダF1オートサロン特別イベントの舞台裏に完全密着

  • auto sport

    auto sport 2025年6月号 No.1608

    [特集]レッドブル 角田裕毅
    5つの進化論

  • asweb shop

    STANLEY TEAM KUNIMITSUグッズに御朱印帳が登場!
    細かい繊細な織りで表現された豪華な仕上げ

    3,000円