バルセロナF1合同テスト2回目の初日。午前11時28分、それまでしばらくコクピットで忍耐強く待っていたジェンソン・バトンは、力なくマシンを降りた。MP4-30からはリヤカウルがすべて取り払われ、やがてガレージのシャッターが閉じられた。シーズン開幕に向けてきわめて重要な最終テストの初日は、わずか7周で終わってしまった。
1週間前のテストではMGU-Kのシーリングに問題が発生して大幅に走行時間を失い、このテストにはさらなる対策品が投入された。対策部品はマクラーレン製との報道もあったが、それは事実ではなく従来と同じ外部サプライヤーの製品だ。
午前9時28分にインストレーションチェックのためのコースインを果たしたMP4-30には、新型のフロントウイング搭載されていた。気流センサーを装備してデータ収集を行い、1周、3周、2周と走行を重ねたところでバトンが車体にバイブレーションを感じ、ピットに戻ったところ、油圧制御系のフルード漏れが発覚した。
現在のF1マシンは様々な箇所が油圧によって制御されているが、トラブルが起きたのはパワーユニットまわりのハイドロ系だったという。すでに26日(木)夜の時点でリーク箇所は特定済みで、原因の最終確認に当たっており、パワーユニットはマシンから取り外されて2日目の走行に向けて内部の部品交換作業が進められている。しかし、ホンダの新井康久F1総責任者が取材に対応することもできずに対策に追われたことからも事態の深刻さが窺えた。またしても。パワーユニット関連のトラブルでテストが満足に進められなかったのだ。
マシンのフルパフォーマンスを確認する走行はもとより、十分なセットアップ作業やタイヤテストもできていない。それでも外から見るほど悲観的な状況ではないと、マクラーレンの今井弘プリンシパルエンジニアは語る。
「今日は午後にはしっかりと走り込んでタイヤテストもやる予定でしたし、本当はもっと走り込みたいと思っています。でも昨年はみんな同じような状況で、あれを知っているので、今ものすごくビックリしているような状況ではないです。(ホンダのパワーユニットは)投入1年目なので、こういうこともありえるかなと想像はしていましたから」
テストとしては、まだ開発のための基本データ収集の段階を抜け出し切れていないが、チームはマシンの出来にかなりの手応えを感じているようだ。
「まだベースのデータを取っている段階で(この新型フロントウイングが)良いとか悪いとかを判断するよりも今後の開発をどっちに進めていくかというデータ取りです。でも、クルマの出来に関しては個人的には割と良い感触を持っています。そんなに悲観するような状況ではない。まずはしっかり走れるようにするのが一番の課題ですね」
チームが感じている手応えは、実際にレースペースで走ってみなければ形にはならない。できることならば、最終週このバルセロナできちんと走り、その片鱗だけでも見せてもらいたいと願わずにはいられない。