日本GPを制し、自己最長となる5連勝を果たして4連覇に王手をかけたレッドブルのセバスチャン・ベッテル。タイトルがかかったインドGPでは、グランプリ前日にも関わらず、ベッテルの会見に多くの報道陣が詰めかけた。
いつもに比べて緊張感が漂う中、フランス人の記者が日本GPで活躍した母国ドライバーのロメイン・グロージャン(ロータス)について次のように質問した。
「セバスチャン、日本GPであなたと優勝争いをしたセバスチャン・グロージャンの走りについてどう思いますか?」
それを聞いたベッテルは一瞬、目を丸くしたが、すぐにこう切り返した。
「あなたの国には、セバスチャン・ローブ※やセバスチャン・オジェ※らたくさんのセバスチャンがいるから、仕方ないね。じゃ、これからは セバスチャン・グロージャンと呼ぼうか」
この回答に、緊張感に包まれていた会見場は笑いの渦に包まれ、和やかな雰囲気となった。集中力は保ちつつも、余計なプレッシャーを自らにかけないこの姿勢こそが、ベッテルの強さの秘訣なのかもしれない。
ちなみに、フランスにはセバスチャン・グロージャンというプロテニスプレーヤーが実際に存在し、フランス人記者が名前を間違えた理由も、かつてその選手を取材していたためだった。
※セバスチャン・ローブとセバスチャン・オジェはフランス出身のWRC(世界ラリー選手権)ドライバー
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日本人F1ジャーナリストの尾張正博氏がグランプリの現場から、ドライバーやチーム首脳の生の声、パドックを賑わせているニュースの真相、レースのキーポイントやサイドストーリーなどを自身の取材情報からお届けする。