今年のF1はマシンの外観、パワーユニット共に大きく様変わりした。そしてドライバーたちは「ドライビングの仕方が変わった」と口を揃える。では、今年のマシンのドライビングは、どのように変わったのだろうか? 検証してみることにしよう。
2013年のF1マシンは、今年のマシンに比べてダウンフォースが大きく、その分ストレートスピートは伸びなかった。長い直線からコーナーへ侵入する際、最高速305km/hだったと仮定すると、F1ドライバーはコーナーの手前75m付近で減速を開始し、ブレーキを目いっぱい踏みながらコーナーに飛び込み、ブレーキを操作しながら旋回するという形だった。クリッピングポイントに達したら、たとえタイヤがまっすぐになっていなくてもスロットルを全開にし、ギヤを巧みに操作して加速していく……大まかに言うとこれが昨年のやり方だった。スロットル操作を開始するタイミングついては、セバスチャン・ベッテルが最も得意としていた部分であり、それが大きなアドバンテージとなっていた。
一方、今年のマシンは最高速度が格段に上がり、昨年305km/hだった地点では315km/hかそれ以上の速度を記録するようになっている。ただし、最高速が速くなったこと、そしてマシンの重量が50kg程度増加したことにより(レギュレーションにおける最低重量は、昨年までの642kgから690kgに変更されている)、ブレーキングポイントがかなり手前になっている。
また、コーナリング中もブレーキを操作し続ける昨年までの走行方法も、今年のマシンではさほど効果が見込めない。というのは、ダウンフォースが削減されたのも大きな要素だが、リヤブレーキがBBW(ブレーキ・バイ・ワイヤ)と呼ばれるシステムによってコントロールされるようになったからだ。
今年からはリヤブレーキで回生するエネルギー量が増えたため、従来の“パッドでディスクを挟み込む”形のブレーキで制動する部分と、回生により制動する部分のバランスをコンピュータで制御し最適化するBBWというシステムが用いられた。ただこのシステムは、減速の途中で前述のバランスが変化することがあり、スピン等に繋がってしまう場合があるのだ。
さらに、クリッピングポイントでスロットルを全開にするという走法も、あまりうまくいかないようだ。今年のマシンの場合、V6ターボエンジンによるトルク(駆動力)と、モーターによるトルクという、特性の異なる2種類のトルクが存在している。そのため、旋回中にスロットルを全開にしてしまうと、トルクのバランスが変わるポイントでスピン等に繋がってしまう恐れがある。そのため、各ドライバーはクリッピングポイントを惰性で通過し、コーナー出口に対してタイヤが真っ直ぐになってから、スロットルを踏み込むようにしているようだ。
つまり2014年のF1マシンのドライビングは、直線で飛ばせるだけ飛ばし、早めに減速を開始、ゆっくりとコーナーを旋回して、旋回が終わったらスロットルを全開……というドライビングになっているはず。結果、多くのコーナーで昨年よりもタイムをロスすることになり、1周あたり3秒程度遅くなっているのだ。