F1を引退し、活躍の場をWEC(世界耐久選手権)に移したマーク・ウェーバーに代わってチャンピオンチームのシートを射止めたのは、ウェーバーと同じオーストラリア出身のダニエル・リカルドである。ウェーバーも陽気なナイスガイだったが、このリカルドもウェーバー以上に愛想が良く、パドックでのウケはバツグンだ。
2011年にHRTよりF1デビューし、その後2年間トロロッソに在籍。通算30ポイントを獲得しているリカルド。昨年は決勝こそ僅差だったものの、予選タイムではチームメイトだったジャン-エリック・ベルニュに対して19戦15勝と圧倒。これが、トップチーム入りを決めた重要な要素となったであろうことは、想像に難しくない。
ただ、今季から相手にしなければならないライバルは、そう簡単に越えられる存在ではない。目下4年連続チャンピオン獲得中、皆様ご存知のセバスチャン・ベッテルである。ベッテルは今年、ミハエル・シューマッハーに並ぶ5年連続王者獲得に挑む。そんな偉大なるチームメイトに打ち勝つことができれば、リカルドの前途は洋々だ。
問題はマシンのポテンシャル。このオフシーズンに行われた最初の合同テスト(ヘレス)ではわずか10周、次の合同テスト(バーレーン1回目)でも43周と、マシンのトラブル多発によりほとんど走行することはできなかった。「レッドブルの5年連続チャンピオンは絶望的」との見方もあったが、最終のバーレーンテストでは105周、ベッテルと併せて183周と、ようやく信頼性を確保しつつあるようだ。これに伴い、走行ペースも向上。ラップタイムは上位に近づいてきている。レッドブルの今季のマシンRB10は、ルノー製のパワーユニットに難を抱えてはいるものの、空力面ではトップクラスとも言われており、トラブルさえ解決すれば、トップを狙うことができるマシンだという。それが何時のタイミングになるのか? は現時点では不明だが……。
それからもうひとつ、これはベッテルにも言えることかもしれないが、若いふたりのラインアップで、マシンの開発を担うことができるかということも注目ポイント。これまでのレッドブルは、新パーツの評価やセットアップなど、ベテランのウェーバーが持つ豊富な経験から多くの恩恵を受けてきたはず。その彼が抜けた穴を、ふたりの若いドライバーが埋めることができるか? ただでさえ熟成が遅れているRB10。ふたりに課せられるマシン開発への責務は大きく、その成否が今季のレッドブルの活躍を左右することになろう。
ついに念願のトップチームのシートを射止めたリカルドが、ベッテル相手にどんな戦いを見せるのかという部分に、ぜひご注目いただきたい。ミスの少なさに定評のあるリカルドだが、チームは間違いなくベッテル主導である。そんな中でも自分の才能を発揮し、成績を残し、居場所を確保することができるか? とはいえ、まずは早期にパワーユニットの信頼性が確保されることを祈るばかりだ。