トップのメルセデスAMGから5秒落ち、12台中の11位。小林可夢偉の名前はそこに記されている。

 テスト最終日のその結果だけを見て、やはり可夢偉は万年最下位のチームで厳しいシーズンを送ることになるのかと落胆したファンも多いのではないだろうか。少なくともパドックでは、ケータハムがスピードの点で圧倒的に後れを取っているだろうと思われている。テスト終盤になってマルシャが好タイムをマークするようになっただけになおさらだが、それが必ずしも正しいとは限らないかもしれない。

 ルイス・ハミルトンは午後5時を回ってからスーパーソフトタイヤを履いてタイムアタックに出て、1分33秒278という最速タイムをマークした。その他のチームも同じように、テストの幕切れを目前に控えて最後に性能確認のためのパフォーマンスランを次々と敢行した。その結果がこの3月2日のタイムシートだ。

 一方、これまで充分なテストができていなかったケータハムと可夢偉は、午前中は7周前後のランを繰り返して空力データ収集を行い、午後は燃料を満載しミディアムタイヤで20周近いロングランばかりを行った。自己ベストタイムは一度だけ行ったソフトタイヤでのアタックによるものだが、クルマはトラブルでDRSが機能しておらず、マシンバランスもほとんど煮詰め切れていない状態。しかも、可夢偉にとってこのマシンで初めての本格的アタックであったため、攻め切れてもいない。

「DRSが動いてなかったし、マシンバランスも悪いまま走ってたから、まだまだこれからやることいっぱいですよ。本当は最後にもっと軽いの(燃料)でパフォーマンスランをやるつもりやったんやけど、クラッチトラブルが出てできなかったし。でも、今日のタイムだってそんなに悪くないからね。あれでスーパーソフトを履いたら1分36秒台に入るから」

 であれば、それはザウバーやマルシャに匹敵するペースということになる。前週のテストで可夢偉自身が語っていた通り、今抱えている問題点さえ解決できれば、ザウバーなど中団チームと戦うことは充分に可能かもしれない。
 世の中が思っているほど、チームも可夢偉自身も悲観的な見方はしていない。ただ、ライバルとの比較などに気を取られることなく、自分たちのやるべきことだけに集中しているだけのことだ。

 世間にどれだけ悲観的に思われようと、別にそれに反論しようとも思わないと可夢偉は語る。
「(世の中の見方が)悲観的でも良いですよ、それでも(実戦で)結果を残せば良いんやから。逆に期待されててあかんかったっていう方がツラいしね(苦笑)。僕らは自分たちにできることを一生懸命頑張ってるだけで、ライバルのことなんか考えてる余裕はないんです。そんな無駄なこと考える時間があったら、僕らはクルマを速くすることだけを考えますよ」

 12日間のテストを終えて、ケータハムCT05はようやくパワーユニットがトラブルなく扱えるようになった段階で、まだまだドライブしづらい状態にある。
「そうですね、(ブレーキングもトラクションも)全部がドライブしづらい。まだまだ先は長いけど、やるしかないから。ここからデータを見て、どこまで煮詰められるかやね。これからイギリスのファクトリーに行って自分たちにできるだけのことをやって、それでオーストラリアに行って、あと(直しきれない部分)は運転で合わせるしかないって感じです」

 その先にあるマシン本来のポテンシャルは「どこまで行けるのかはまだ見えていない」と可夢偉は言う。しかし、それを最大限に引き出すために可夢偉とケータハムは開幕まで懸命に努力し続けるのだ。

 それでもまだあなたは、ケータハムが圧倒的最下位にいると悲観的に考えるだろうか?

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