わずか17周、されど17周。その数字だけを見ればケータハムと小林可夢偉を取り巻く状況は深刻なように映るかもしれないが、2回目のテストを終えた可夢偉の表情は思いのほか明るかった。

「ブレーキング時のエネルギー回生のテストをしたんですけど、クルマがとてつもないことになっててマトモに走れる状態じゃなかったんで“走り”としては全然なんですけど、“内容”としてはこれだけはやってて良かったと思います。この最後の17周っていうのが意外に大きかったなと」

 当初、最終日は可夢偉が担当する予定だった。しかし前日にロングランを行った新人マーカス・エリクソンのプログラムが中途半端な形で終わってしまったため、前日のデブリーフィングで急きょ、エリクソンの半日走行が決まったのだ。
 可夢偉としては歓迎せざる決定ではあったが、CT05にはすぐにエネルギー回生のバッテリーにトラブルが出てしまい、リヤエンドを分解して長い作業を要する自体となってしまったため、結果的に大きな影響はなかったと言える。

 CT05はウマに乗せられて、マシンの下に潜り込む限られたクルー以外はマシン周辺に立ち入り禁止のテープが張られるような状態。午後3時のコース復帰を目指して作業は進められたが、ようやく準備が整ったのは午後4時を回ろうかという時間になってからだった。
 可夢偉はまず中古のソフトタイヤで勢いよくコースに飛び出していったが、いきなりターン1のブレーキングでマシンのリヤが流れて大きく姿勢を乱しヒヤリとさせた。
「ブレーキングしたらリヤがロックしてパカーン!って流れて、(1コーナーとは)反対向いてガードレールに真正面に向いてました(苦笑)。バーレーンやったら壁がないから良いけど、あれがメルボルンやったら、あの時点で壁にグサって刺さってたと思う

 CT05が初めてそんな挙動を見せたのは、MGU-K(運動エネルギー回生装置)のエネルギー回生をフルに使い始めたからだった。これまで以上に大きな発電をするために、リヤブレーキがナーバスな動きを見せたのだ。
 そんなマシンを手なずけながら、可夢偉は7周、8周と周回数を重ねていく。パワーユニットのパワー不足は明らかで、最高速は伸び悩む。そして前述のようにブレーキングも不安定で、ラップタイムは1分43〜44秒台を維持するのがやっとだった。

 しかし2日目の走行では可夢偉はアタックランで1分39秒855を記録しており、最終日になってようやくエネルギー回生をフルに使う扉を開けたことで、CT05のポテンシャルにも手応えを得ている。
「仮にパワーユニットが同じレベルなら、もしかするとザウバーと戦えるくらいのポテンシャルはあるんじゃないかと思うんです。ソフトタイヤで、しかもパワーユニットがあの状態で1分39秒台に入ったんやから、行けるんちゃあうかなって。パワーユニットをちゃんと使えれば、安く見積もってもあと1〜2秒は速くなるはずですからね。

 それを実現するためには、残る4日間のテストでしっかりと問題を解決して開幕戦に臨まなければならない。来週までのインターバルの間にできうる限りの準備を整えるべく、可夢偉はバーレーンに居残ってエンジニアたちとテストプログラムについての協議を重ねるという。
「まだまだ先は長いし、やることだらけで頭がパンパンですよ」
 可夢偉は苦笑いするが、終始和やかな雰囲気で語り続けた。

 たった17周の走行ではあったが、とても意味のある17周。その3本のランで得たデータが、何よりも大切な最終テストに向けてケータハムと可夢偉を後押ししてくれそうだ。

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