ドライバーとチームが無線で交わした会話から、2015年のF1グランプリを振り返る年末スペシャル企画。今シーズンを象徴する言葉、日常生活でも使ってみたい言葉など、記憶に残った言葉を選び抜き、時系列で前編からプレイバック。

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【第2戦マレーシアGP】セバスチャン・ベッテル ← 「フェラーリ・イズ・バック! ファンタスティコ! グランデ・セブ!」

 開幕戦オーストラリアで、フェラーリ加入初戦にして3位表彰台。そして2戦目のマレーシアではメルセデス勢を抑えて優勝を挙げたベッテル。フェラーリにとっては2013年スペインGP、ベッテル自身にとっても2013年ブラジルGP以来の勝利だった。チームからの祝福の無線に対して、ベッテルは「イエ───! みんなありがとう! フォルツァ・フェラーリ!」とハイテンションで応答。このレースでルイス・ハミルトンはプライムタイヤを履かされて「これは間違ったタイヤだ!」と叫び、ニコ・ロズベルグには「すべてを出し尽くせ。ターゲットは2位フィニッシュだ。コース上でベッテルを抜く必要がある」と指示が飛んだが、ともにベッテル逆転は果たせなかった。なお、ベッテルはマレーシアGPを2015年のベストレースに挙げている。

【第5戦スペインGP】ルイス・ハミルトン → 「不可能だ。別の解決策が必要だ」

 スタートで出遅れてベッテルに抜かれたハミルトンは、ピットストップでもアウトラップでトラフィックに引っかかり逆転できず。チームからは「ベッテルにアタックしてコース上で抜け」との無線が入ったが、ハミルトンは「無理」と答えた。さらに「すでにプランBだ。コース上で抜くしかない」と答えるメルセデス陣営。シーズン終盤、ロズベルグとの攻防で、たびたび「違う戦略」を要求したハミルトン。スペインは、それを予感させる展開となった。ハミルトンは2回目のピットストップでアンダーカットに成功したものの、首位ロズベルグとの差は22秒。「どのくらいのペースで走れば追いつける?」と血気盛んに問いかけるハミルトンに対して、レースエンジニアのピーター・ボニントンは「残り周回数では不可能だ。2位が最適」と冷静に「不可能」返し……。それでもハミルトンは「不可能なんてないんだ!」と、あきらめない姿勢を見せたが、ボニントンの「我々はしっかりと結果を手にしていく必要がある」という言葉を受けて、ロズベルグのシーズン初優勝を受け入れるしかなかった。

【第7戦カナダGP】フェルナンド・アロンソ → 「イヤだよ、イヤだよ!」

 レースエンジニアのマーク・テンプルから「燃料をセーブする必要がある」と言われたアロンソは「「I DON’T WANT! I DON’T WANT!」と声高に反対した。「燃費セーブをしないと、あとで大きな問題を抱えることになる」と言い聞かせるテンプルに対して、アロンソは「すでに問題を抱えているよ! こんなドライビングじゃアマチュアみたいだ。いまはレースをして、あとで燃料のことを考えたい」と訴えた。高速サーキットのモントリオールで次々と抜かれながらも「燃費セーブは、あとでやればいい。あの瞬間は少しでもライバルと戦いたかったんだ」という心境だったのだ。

【第10戦ハンガリーGP】セバスチャン・ベッテル → 「ジュール、僕らは君と一緒にいるよ」

 ハンガロリンクは2014年の日本GPで重傷を負い、亡くなったジュール・ビアンキへの思いと悲しみに満ちていた。スタート直前に全ドライバーが集合して黙祷が捧げられ、ここで今季2勝目を挙げたベッテルは、かつてフェラーリに在籍したビアンキへの思いを口にする。スクーデリアは「マラネロに、もうひとつフラッグをもたらしてくれた! 素晴らしい勝利だ」と称え、ベッテルはチームへの感謝に続けて「ジュール、僕らは君と一緒にいるよ。いずれ君も、ここで一緒にレースをしたはずだった。この勝利を君に捧げるよ」と全世界に向けたメッセージを。3位で初表彰台を獲得したダニール・クビアトも「この表彰台を捧げるよ」と天に語りかけた。

【第11戦ベルギーGP】ロマン・グロージャン → 「最高だ、みんなありがとう(涙)」

 ロータス・チームは財政難で訴訟を起こされ、機材の差し押さえや夏休み明けの現地入りすら危ぶまれる状況を乗り切り、なんとか参戦を果たした。それでもグロージャンは、なんと予選4位を獲得。交換するパーツがないまま戦っているため、ギヤボックス交換で5グリッド降格を科せられてたにもかかわらず、果敢な追い上げと巧みな戦略で3位に入った。ERSの回生を集中させる「ストラット12」を使える周回は限られており、わずかなチャンスでオーバーテイクを決めたグロージャン。ロータスからは「君のキャリアで最高のレースのひとつだったよ」と賛辞が送られた。グロージャンは涙ながらにチームの健闘を称え、2013年以来の表彰台に沸くスタッフたちの目にも涙が見えた。

【第12戦イタリアGP】ルイス・ハミルトン ← 「トークモードをゼロにしてくれ」

 レース終盤になって、レースエンジニアのボニントンから「ストラット3、ギャップを広げる。ハンマータイムだ。理由は聞かないで、とにかくプッシュしてくれ」との指示。ハミルトンは「これ以上そんなにペースは上げられない。僕はどうしたらいいんだ?」と困惑、異様な空気が漂った。ペースアップの指示があったのは、FIAによるスタート直前のタイヤ内圧測定で規定違反が疑われたためだった。チェッカー後に「あの数周はクールじゃなかったよ」と文句を言い始めるハミルトンに対して、ボニントンは「黙れ」という意味で「トークモード・ゼロ」を指示した。内圧問題はレース後の審議の結果、タイヤウォーマーの運用ミスもあったため不問に付されたが、疑惑が残る裁定となった。ベルギーGPでのタイヤバースト続発を受けて強化された最低内圧とキャンバー、ウォーマー温度規定は、このあと監視が強化されていくことになる。

「記憶に残る無線セレクション2015」後編に続く

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