第96回インディアナポリス500マイルレースは27日、200周の決勝レースが行われ、ダリオ・フランキッティ(チップ・ガナッシ)が優勝。ファイナルラップ、2番手につけていた佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン)はトップを賭けた勝負を展開したが、クラッシュを喫した。
第96回目のインディ500は激しいレースとなった。ホンダ、シボレー、ロータスの3エンジンが競い合うこととなった伝統の一戦では、ホンダ勢が下馬評を覆して戦いの中心となって進み、リードチェンジは歴代最多となる34回にも及んだ。また、今日のレースでリードラップを記録したドライバーは10人いたがこちらも歴代2位の多さである。最多記録は1993年の12人だ。
序盤から、パワーでも燃費でも優位に立ったホンダユーザーが優勢のうちに進めたレースは、フランキッティ、チームメイトのスコット・ディクソンというふたりのチップ・ガナッシ勢、そして抜群の決勝ペースを誇っていた佐藤琢磨により争われていた。しかし、終盤にアクシデントが重なったことで、残り周回数的にフィニッシュまでの燃費が厳しいと言われていたシボレー勢に再びチャンスをもたらした。
トニー・カナーン(KVレーシング)、ライアン・ブリスコ(ペンスキー)、ジェームズ・ヒンチクリフ(アンドレッティ・オートスポート)らがトップグループとの差を縮めることとなり、琢磨はレース終盤のバトルでいったん7番手まで下がったが、ゴールまで6周で切られた最後のリスタートで見事なダッシュ! 3台をごぼう抜きして4番手に浮上すると、そのままの勢いでカナーンをパス。さらに3番手ディクソンまでも抜いて最終ラップを迎えた。
最終周を告げるホワイトフラッグを潜った直後のターン1、琢磨はフランキッティに並びかけてインサイドへ。しかし、コースイン側の白線を踏んだ後にスピンし、コースを横切ってウォールにクラッシュ! レースは即座にフルコースコーションとなり、そのままフランキッティは優勝。2位はディクソン、3位はカナーンという結果になった。琢磨は1周遅れの17位という結果だった。
琢磨と接触することなく、3度目のインディ500を制することになったフランキッティは、「琢磨はアグレッシブなドライバーだ。あそこをチャンスと見たのだろう。インからのパスを試みた。彼がやったことはすべて正しかったと思うよ、ターン1でリヤを滑らせたこと以外は」と語った。
一方、日本人初のインディ500制覇を目前にした琢磨は、「最終ラップを迎える時にダリオのスリップに入りました。勝ったと思いました。ターン1を並んだまま回れば、ターン2でトップに立てた。でもその思惑通りにはならなかった」と絞り出した。
「ダリオはもう少しスペースを僕に与えるべきだった。そうなっていたら、僕らは並んだままコーナーを曲がれていた。僕のマシンはコース内側の白線を大きく越えていた。マシンの中央部が白線の上に来るぐらいで、もうほとんど芝生に乗ってしまいそうで……マシンが滑り出しました」と悔しさを語った。
・フランキッティの優勝はすべてアンダーイエロー
ダリオ・フランキッティの優勝スピードとなる167.734mphは歴代5番目の速さ。フランキッティは、インディ500で3勝以上挙げたドライバーの通算10人目となった。彼の3勝はすべてイエロー下でのゴールである。また、スコット・ディクソンの2位獲得によってチップ・ガナッシのワン・ツーフィニッシュが成し遂げられたが、チームメイトによる1〜2位独占は、2003年のチーム・ペンスキーによるジル・ド・フェラン、エリオ・カストロネベスによるもの以来だった。
チームオーナーのチップ・ガナッシにとって、今回の勝利はインディ500での5勝目で、オーナーとしてはルー・ムーアと並んで勝利数では歴代2位タイとなった。トップはロジャー・ペンスキーの15勝だ。
・決勝でのシボレー不振の原因は
予選で圧倒的な速さを誇り、ファスト9に8台を送り込んだシボレー勢は、決勝レースではパワーアドバンテージを失い、好燃費による優位さえもホンダに奪われていたのは驚きだった。開幕4戦、そしてインディ500予選までで見られたシボレーの速さ、強さはレースではみられなかった。ホンダのインディ向けチューニングが大きな効果をもたらしたということなのだろう。
また、決勝日の暑さ(歴代2位タイ)がエンジンのパフォーマンスに与えた悪影響は、シボレーに対してのものの方がホンダに与えたものよりも大きかったとも考えられる。ホンダのシングルターボエンジンに比べて、シボレーのツインターボエンジンは冷却で苦労をしており、猛暑のレースではサイドポッドのオープニングを大きくせざるを得なかった。それによってダウンフォースが減少し、ドラッグが増大して戦闘力を下げてしまっていた。