7日、ホンダは2014年のモータースポーツ活動に関する発表会を行い、そこでGT500クラスにホンダNSXコンセプト-GTで参戦する5台、ホンダがサポートするCR-Z GTの2台という7台のスーパーGTドライバーラインナップが発表されたが、この中にこれまでホンダ陣営の中心のドライバーのひとりであった道上龍の名がなかった。

 1995年にJGTC全日本GT選手権にポルシェで初めて参戦した道上は、98年にシリーズに復帰し、ホンダNSX-GTをドライブ。2000年にはCastrol無限NSXを駆り、NSXに初めてのチャンピオンをプレゼント。その後もホンダのGT500ドライバーの中心として、2013年まで活躍してきた。

 そんな道上は、今季GT300クラスのチャンピオンチーム、TEAM無限に加入。ただしこれはドライバーとしてではなく、チームのエグゼクティブアドバイザーという肩書きで、ARTA Projectの土屋圭市エグゼクティブアドバイザーと同様のポジションになるという。

 ただ、7日に発表されたホンダの今季活動計画の中に、道上の名は他にない。では道上はこのままレーシングドライバーとしては引退で、指導者としての道を歩むのだろうか? しかし道上はオートスポーツwebの取材に対し、これを否定した。

「基本的には僕は引退したつもりではなく、自分の中では全然現役でいる気持ちです」と道上は語る。では、今回の発表に至るまではどんな“流れ”があったのだろうか?

「正直僕はもっと早い段階で乗っていなかったかもしれない。この3年くらいは若い選手の育ち方が、ホンダさんとして『まだまだ』だった部分もあり、僕は(ダンロップ)タイヤの開発も担っていたので、『今年も乗ってくれ』とやっていた形です」

「今年、伊沢(拓也)がGP2に行くじゃないですか。最高峰のF1へ続く道を、これからホンダが本格的にやっていくことになる。ホンダにはSRSというレーシングスクールもありますが、どんどん若い選手がスカラシップを獲ってくる中で、結局上のシートも限られているし、誰かが抜けないといけない」

 道上は以前からSRSの講師など若手育成にも力を入れてきていたが、ホンダの中で育成に向け本腰を入れるべく、この状況の中で、今回のエグゼクティブアドバイザーという職に就くことを決めたという。今季からホンダはマクラーレンとともに世界で戦える日本人ドライバーを育てるべく共同で育成プログラムを進めるが、その一端を担う形だ。今回の発表の中では触れられなかったが、育成プログラムの一環であるHFDP RACINGのF4での活動を道上が担うことにもなるという。

「そちらの方がどちらかというと最初にあった話ですね。F4の方をメインに見ていく形になります。指導者という立場では1年生となりますが、本格的にプロの世界での仕事にもなってきますし、そこでは自分の評価も見られるようになってきますからね。今までは走る側でしたけど、教える側としてまわりがどう見てくれるか。今与えられている仕事に目一杯集中して頑張ろうと思います」

「スーパーGTには今度はドライバーとして行くわけではないですけど、ドライバーをやっていたら見えていなかった世界も見えてくると思いますし、また別の人との出会いもあるかもしれませんからね。今までは運転のことしか考えていなかったですから、そういう意味では楽しみな部分もあります」

 ただ、先にも触れたとおり、“レーシングドライバー道上龍”はまだ健在だ。道上は「チャンスがあればもちろん乗りますし、そのための準備はおこたらないでちゃんとやっておこうと思っています」という。

「自分自身まだまだやれると思っています。ホンダで長くやってきたこともありますから、他のメーカーでの仕事というのはないかもしれないですけど、自分なりにやれることをやっていけたらな、と思っています」

「もちろん気持ちとしては、乗れないことに対しての悔しさはやっぱりあります。だけど、自分が『やっぱり乗りたい!』と駄々をこねるのではなく、自分の年齢的に考えても、そういう立場になってきたんだな、と思っています」

 現在のところ、ドライバーとしての「具体的な話は何もない」と道上。ただ「みんなが『やめたんじゃないか』という風には思って欲しくないです。逆にそこは、“生涯現役”ではないですけど、まだドライバーでいたいですね」と語った。

「今日も(ガブリエル)タルキーニのオッサンとか見ていると『コイツ51歳やんけ』なんて思うんですけど(笑)、そこは超人的な肉体も持っているでしょうし、フォーミュラは無理でもツーリングカーは全然できると思うし、何かしら乗っておきたいとは思います」

「とりあえずカートはすぐに乗れますし(笑)(※実家はカートショップ)、何かしら走る部分はなんでもやっておこうとは思います。アドバイザーとしてレースに行ったら、自分が乗っているイメージを抱きながら外から見るような感じかな、と思っています」

「これだけ僕も長くやらせてもらっていて、ホンダさんに“次の準備”をしていただいていたというか、また働ける場を考えてくれていたということにはすごく感謝しないといけないと思っています」と道上は語る。今後はドライバーとして、そして指導者として、世界に通じるホンダドライバーを育てていくことになる。スーパーGTとしては今年もステアリングを握る姿を見たかったところだが、まずは指導者としての手腕を楽しみにしよう。

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