2025 AUTOBACS SUPER GT Round2
開催地:富士スピードウェイ(静岡県)/4.563km

5月3日(予選) 天候:晴れ コースコンディション:ドライ 観客数:3万3300人
5月4日(決勝) 天候:晴れ コースコンディション:ドライ 観客数:4万9200人

入賞まであと一歩。トライ&エラーの先に見えた日進月歩の証し

 スーパーGTにおける全8戦のラウンドにおいて、最多の観客動員を集めるのがゴールデンウイーク開催の第2戦富士だ。今年は5月3日の予選日が3万3300人、5月4日の決勝日には4万9200人のファンがつめかけた。

 世界屈指の1.4km以上に及ぶ長いストレートが特徴的な富士スピードウェイは『特殊なサーキット』と言われている。GT300では270〜280km/hのトップスピードからハードブレーキングで1コーナーに進入。結果に占める最高速の影響は大きく、一方で、高速コーナー区間のセクター2ではダウンフォースが必要であり、低速コーナー主体のセクター3ではメカニカルグリップが重視される。セッティングが難しいコースだ。

 また、今大会は給油をともなう2回のピットが義務づけられた3時間レース。30号車apr GR86 GTは永井宏明と織戸学に加え、第3ドライバーの小河諒という布陣で臨んだ。

公式練習 25位 5月3日(土)9:00〜11:05

 公式練習は経験豊富な織戸から走り出し、持ち込んだタイヤとセットアップを確認する。しかし、バランスが良いとは言えない状況だった。30号車は今年、タイヤをミシュランにスイッチ。タイヤは勝敗に占める割合が非常に大きく、仕様が少し違うだけでもタイムに影響する。

 本来であれば、オフシーズンテストでタイヤの特性を見極めてセットアップも進めるが、オフシーズン中は気温が低く、さらにテストは雨絡みになることが多く、十分なデータを持ち合わせていないことが原因だった。

 手探り状態でのタイムは織戸が3周目に記録した1分37秒706がベストラップとなり、公式練習は25位に。その後は織戸と永井がピットインとセットアップのアジャストを繰り返していくが、不安を払拭できないまま予選に挑むこととなった。

公式予選 5月3日(土) Q1B/13位 14:48〜14:58 総合順位25番手

 予選に向けて、チームはセッティングを大きく変更した。aprはかつてミシュランタイヤを使い、GT300クラスでタイトルを獲得している。時代も車両も違うが、当時のバックデータも参考にした。

 予選はQ1B組に出走。ドライバーは小河だ。公式練習では確認の1周しか走っていないが、2023年には第3ドライバーとして、また今年の富士公式テストでもGR86での走行経験があり、小河が長年参戦するポルシェカレラカップジャパン(PCCJ)もミシュランであり、タイヤの特性は熟知している。

 だが、車両はもちろん、カップカーとスーパーGT用ではタイヤの仕様も異なり、厳しい状況に変わりはなかった。1分37秒104は13番手タイムとなり、Q2に進出することはできなかった。

 望んでいたポジションではないが、予選によって小河のインフォメーションを得ることができ、公式練習での織戸と永井のコメントと合わせて現状を確認できた。この糧を決勝へとつなげるべく、新たなセットアップに取り組んで決勝での追い上げを目指す。

永井宏明選手

「公式練習ではタイヤも含めた全体のバランスが決まっておらず、乗りやすいとは言えない状況でしたね。そこで分かった問題点を修正して予選に行きましたが、それでも改善するには足りず、厳しい結果になってしまいました。決勝に向けては、直前の20分間のウォームアップで調整して臨みたいと思います」

織戸学選手

「今回は持ち込みからセットアップを大きく変えてきましたが、まだタイヤとうまく会話ができていないですね。予選に向けてもセットアップを変えましたが、根本的な解決はできていませんでした。若い小河選手に託しましたが、タイヤの良いところを出し切ることができませんでした」

小川諒選手

「ミシュランのウォームアップの仕方とか、メーカーとしてのクセはカテゴリーが違っても変わらないだろうというところで予選を任せていただきました。Q1を突破できず、ドライバーとしては非常に悔しい結果でしたが、決勝に向けてネックになる部分に気づくことができたので、そういう意味ではすごく意義のある予選だったと思います」

金曽裕人監督

「ドライコンディションで、レース本番の温度レンジでまともに走るのは今回が初めてという状況でした。過去のバックデータも試してみましたが、時間が足りなくてセットアップが追いついていない。どのタイミングで、どのように使うのがミシュランタイヤの正解なのか、我々がまだ分かっていませんね。それでも公式練習と予選でドライバー3人のコメントをフィックスできたので、決勝に向けて改善したいと思います」

決勝レース(107周)16位 5月4日(日)14:18〜

 スタート進行直前に行われた20分間のウォームアップで新たなセットアップを試してみたが、公式練習の走り始めから悩まされていたオーバーステアは解消できず。決勝に向けて、さらにセットアップを修正することにした。

 第1走者は織戸。ベテランのドライビングで第2スティント以降へとしっかりつなげ、またタイヤの内圧などのインフォメーションを託す。レースはスタート直後から接触やコースアウトが相次ぎ、その混乱をうまく抜けて順位を上げていく。ペースも安定しており、20周目には19番手までポジションアップ。

 だが、その翌周にFCY(フルコースイエロー)が導入されてタイヤが冷やされると、グリップダウンが顕著になる。オーバーステアの特性は残っており、織戸はリヤタイヤを守る走りを続けていたため負担を強いたフロントタイヤのデグラデーションが進んでいた。予定よりも数周早い30周でピットに向かう。

 給油とタイヤを交換して小河に交代。予定よりも長いスティントになることから、序盤はプッシュせず、タイヤを労る走りを続ける。また、コーナーでは明らかにこちらが速くても、最高速で勝るFIA-GT3車両を抜きあぐねてもいた。それでも工夫を凝らし、順位を上げていく。

 小河のスティントは40周のスティントとなったが、35周を過ぎたあたりからリヤのグリップが落ちはじめた。オーバーステアによくある症状だ。ピットのタイミングもあり見た目では13番手を走行中の70周目にピットに入った。

 最終、永井のスティントに向けても給油とタイヤを交換。永井は22番手でコースに戻る。第3スティントは涼しくなることが想定され、チームは第1スティントと第2スティントとは異なる低温レンジのタイヤをチョイス。その選択は最適解であり、永井は安定したラップを刻んでいった。その結果、16位でチェッカーを受けた。

 ポイント獲得まではひとつ順位が足りなかったが、苦しい状況ながら入賞まであと一歩に迫ったのはポジティブな結果だ。まだ完璧と言えるレベルではないが、セットアップも徐々に改善していった。この先も試行錯誤は続くだろうが、近いうちに入賞できる手応えを感じることができた。

永井宏明選手

「決勝のセットは進化しており、昨日よりも乗りやすくアベレージも安定させることができました。まだまだ、タイヤとのマッチングをプッシュしないと良さを引き出すまでに至ってない感じです。2週間後にはGTE鈴鹿テストがありますので、もっと大きくセットを振ってみて確認したいですね。15位の入賞圏内は見えてきてますので、皆で頑張って攻略します」

織戸学選手

「スタートしてからは比較的に安定して走れていましたが、FCYでタイヤが冷えたらグリップが一気になくなってしまいました。たぶんピックアップの影響もあったかな。ドライビングスタイルやコンディションの違いがあるとはいえ、僕のときはフロントタイヤが、小河選手のスティントではリヤタイヤが先にグリップダウンしているのは不思議な現象でした。なぜそうなったのか検証して、タイヤの使い方を含めて進化させていきたいですね」

小川諒選手

「僕たちのクルマはストレートで劣勢にあるので、抜くのは難しいですね。それでもコカ・コーラコーナーや100Rはすごく速いので、ヘアピンのインに飛び込んだり、GT500との絡みを利用して何台か抜くことができました。根本的なオーバーステアは解消できませんでしたが、予選のときに比べるとマシンバランスは良くなっていました。決勝に向けたセットチェンジは有効に変化してくれたので、これをベースに方向性は見えてきたと思います」

金曽裕人監督

「まだタイヤのマイレージが読み切れておらず、三等分のようなレースをするしかありませんでした。ミシュランタイヤの理解度が深まれば、戦略の幅も広がるはずです。公式練習、予選に比べると、マシンバランスはだいぶ改善できました。どのスティントも『まだ先があるよね』という状況。結果は16位と入賞には届きませんでしたが、25番手スタートからここまで上がってこれたのは日進月歩で前に進んでいる証拠。5月13〜14日にはGTE(GTエントラント協会)のテストが鈴鹿であるので、そこでトライを続けます!」

apr GR86 GT
apr GR86 GT(永井宏明/織戸学/小河諒) 2025スーパーGT第2戦富士

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