さあ、いよいよ実際にレースを始めよう。カテゴリーの選択は前回、長谷見昌弘がアドバイスしたとおりだ。遊びでレースを始めたい人はどんなレースに参加しようが構わないが、もし本格的に上級レースまで視野に入れているなら、フォーミュラカーのレース以外は考えない方が良い、ということである。
カートは入門カテゴリーとしては最適だが、ここではそのカートを卒業して本格的な4輪レースに進む段階から話を進める。まず、入門カテゴリーにフォーミュラ・レースがあるのかどうか調べなくてはならない。
入門フォーミュラは今の日本にもいくつかある。かつては入門に最適なFJ(フォーミュラ・ジュニア)1600レースがあったが、今はスーパーFJとして各地で地方選手権が行われ、年末には日本一決定戦が行われている。
ホンダ、トヨタ、日産が世界に通用するドライバーの育成を目指して2006年から始めたFCJ(フォーミュラ・チャレンジ・ジャパン)は、2013年限りでプログラムを終了した。現在はこのFCJの後継としてF4レースがその役割を担っている。
F4は1993年に始まったカテゴリーで、現在入門フォーミュラカーレースの代表的存在と言えるかもしれない。また、今年からFIAも世界規格のF4選手権を立ち上げていて、日本ではGTAがプロモートする予定だ。
より効率的に上級フォーミュラカーレースにステップアップを目指すなら、自動車メーカーが運営するドライバー育成プログラムに加入するのがいいだろう。ホンダが鈴鹿サーキットで行うSRS-F(鈴鹿レーシングスクール・フォーミュラ)、トヨタが行うFTRS(フォーミュラ・トヨタ・レーシングスクール)が有名だ。こうしたスクール形式のほかに、トヨタはTDP(トヨタ・ヤングドライバー・プログラム)、日産はNDDP(日産ドライバー・デベロップメント・プログラム)といった組織を運営、そこに参加を許されたドライバーはF4レースやF3レースへの参加を通して実践レースを学ぶ機会を与えられる。ただ、参加するにはハードルが高い。真剣にレース活動を考える若者を選抜するにはハードルを高くする必要があるのだろう。
長谷見は日産のトップドライバーとしての長い経験から、NDDPのF3およびスーパーGTのチームで監督を務め、若手ドライバー育成に携わっている。彼が指導するNDDPのドライバーはF3レースに参戦しながら、レースに勝つために必要な諸々の事柄を長谷見から習うのだ。
では、レースを始めるときに最初に必要な知識は何だろう? レーシングスーツやヘルメットといった身の回りのものの選択基準はどこにあるのか? 長谷見のアドバイスはこうだ。
「長い間運転していても疲れないものを選ぶのが良いでしょう。今はFIAの安全基準に合致していないスーツやヘルメットは使用出来ませんから、その基準を満たしたものの中から自分にあったものを選べば良いと思います。その中で最も慎重に選ばなければならないのはヘルメットです。ヘルメットは頭を守る道具ですから、ドライバーの生命線と言っていいでしょう。大きすぎたり小さすぎるとレースに支障が出ますし、重すぎると首が疲れます。慎重に選んで下さい」
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