計3回の開幕前テストを終え、各チームの勢力図は今どのような状況にあるのだろうか。誰に聞いても「今年は例年以上に分かりにくい」という答えが返ってくるが、すべてのテストを現地で取材、各チームの様子を見てきた印象から独自の評価をしてみたいと思う。

 評価基準となるのは、「速さ」「信頼性」「雰囲気」の3つ。ベストタイムだけでなく巡航ペースがどの程度のものか、トラブルに見舞われることなく走っているか、そしてなによりも仕上がり具合が反映されるチームスタッフの間に漂う雰囲気がどのようなものか。それらを見ていれば、少なくともシーズン序盤にスタートダッシュを決めるチームがどこかは分かってくるものだ。

●メルセデスAMG(速4.5、信3、雰3)

 まず、最速の呼び声が高いのはメルセデスAMG。最終日にはハミルトンが完璧なアタックを決められなかったと言いながらも1分33秒台のトップタイムを刻んだ。しかし実は最終週になって細かなトラブルが多く出始め、午前中の大半をガレージで過ごすことも多かった。マクラーレンも同様だが、一度走り始めてしまえば問題なく走れるものの、「エンジンがかかるまでは油断ができない」という状況にあるらしい。それもあってか、チームの雰囲気は決して手放しで喜んでいるというような様子ではない。

●ウイリアムズ(速5、信4.5、雰5)

 要注意の伏兵はウイリアムズだ。一発もレースペースも速さにはライバルたちが目を見張っている。最終日のアタックではメインストレートでマシンが止まってしまったが、どうやらチームでは1分32秒台が出せると踏んでいたようだ。バーレーンテスト全体でもフェリペ・マッサが最速タイムを出しているが、トラブルも驚くほど少なく、チームの雰囲気はすこぶる明るい。開幕戦では間違いなく上位に名を連ねてきそうだ。

●マクラーレン、フォース・インディア(速3.5、信3、雰3)

 レースペースではフォース・インディアも侮れないと見られており、メルセデスユーザーはいずれも順調な仕上がりを見せているが、マクラーレンは速さの点で後れを取っていることを認めている。さらには最終週にやはりトラブルが散発してやや不穏な空気が漂い始めた。開幕戦に投入するというアップグレードパッケージで空力面をどれだけ進歩させ、同時に信頼性も確保できるかが勝負になるが、それが簡単でないことを一番よく分かっているのは彼ら自身なのだろう。

●フェラーリ(速4、信3、雰3)

 フェラーリも外から見るほど順調な状況とは言えず、パワーユニット制御系の細かなトラブルが最終週になっても出続けていた。そのため車体側のテストは思うように進められず、最終週2日目・3日目に行ったレースシミュレーションでも、主に燃費マネージメントとパワー不足によるペースの遅さが目立った。最終週には新しい空力パーツを投入し最後の2日間でようやくセットアップ作業を進めたとはいえ、決して順調なテストが送れたとは言えず、メルセデスAMGやウイリアムズに後れを取っていることを認めている。マシン習熟に苦しんだ2年前の開幕前ほどではないが、チームスタッフたちの表情からは昨年ほどの明るさは感じられない。

●ザウバー、マルシャ(速3、信3.5、雰3)

 フェラーリユーザー勢のザウバーは淡々とテストを進めているが、主にパワーユニットの扱いに苦労しているようで、速さの点では目立たない。最終週3日目にはインストレーションチェックで出火して1日を棒に振るというトラブルにも直面した。一方でマルシャは最終週にパフォーマンスを進化させザウバーと同等の速さを見せ始めたが、トップから3秒落ちでしかない。逆に言えば、現在のフェラーリ製パワーユニットの熟成度と限界点がそのあたりにあるのかもしれない。本家フェラーリですらアタックをしてもメルセデスAMGの1秒落ちなのだ。

●レッドブル(速4、信2、雰3)、トロロッソ(速3.5、信3、雰2.5)、ケータハム(速3、信3、雰2.5)、ロータス(速1、信1、雰1)

 最後に、ルノー勢はまとめて比較した方が良いだろう。なぜなら、ルノー製パワーユニット側のトラブルによってテスト進行に深刻なダメージを負ったため、他メーカーとの公平な評価は難しいからだ。

 バーレーン最終週ではパワーユニット側のトラブルはほとんど見られなくなったが、そこで順調に周回を重ねていけたのがトロロッソとケータハムで、速さではトロロッソに分がある。だがどのチームもパワーユニットのERS(エネルギー回生システム)ブースト制御を上手くコントロールできていないため、ドライバビリティに深刻な問題を抱えたままだ。

 レッドブルはパワーユニット側だけでなく車体側にも問題が山積しており、信頼性とテスト進捗という点ではこの2チームに後れを取った。あれだけマシンを隠すことには心血を注ぐチームが、白昼堂々ピットレーンでピットストップ練習をするなど、もはやそんなところを気にしても仕方ないという境地なのだろうか。しかしエンジンパワーが反映されにくいセクター2では速いタイムを記録するなど、レッドブルを警戒する声は日増しに強まってきている。

 最も深刻なのはロータスで、車体側の基本的なデータ確認程度しかできていないうえに、トラブル潰しすら終えられていない。他のルノーユーザーよりもテスト1回分の遅れを取ることは想定内だっただろうが、まさかトラブルシューティングにテスト2回分が必要になるとは予想外だったのだろう。

 いずれのルノーユーザーチームも雰囲気が良いわけではないが、思いのほかレッドブルが慌てていないというか和やかな雰囲気すら漂っているのは、速さそのものの手応えは感じられているからなのかもしれない。もちろんロータスには厳しい雰囲気が漂っているが、自分たちにはどうしようもない問題だけに、むしろ呆れて笑うしかないというレベルですらあった。

 開幕戦オーストラリアGPまではまだ2週間弱ある。もちろんどのチームもこのまま開幕を迎えることはないだろう。それに、どのチームにしても信頼性の不安が100%払拭できているわけではない。実走テストができない中でどれだけ問題を解決し信頼性を高めてくるか。まだまだファクトリーでは開幕戦に向けて最後の努力が続けられているはずで、メルボルンでその結果が見られるのを楽しみにしたい。

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