GAZOO Racing 86/BRZ RACEの第5戦は、初めて本州を離れ北海道、十勝スピードウェイが舞台。この後のオートポリスラウンド同様ポイント5割増のレースながら、参加は29台に留まったこともあり、初めて予選落ち、コンソレーションなしということになった。
さて今回いちばんの焦点は、山野直也(P.MU RACING 86)がすでにランキング2位の大西隆生(オートバックスG7 86ポテンザ)に41ポイントもの差をつけており、タイトルに王手をかけていたこと。ここで4勝目を挙げれば、大西を含み誰の結果を気にすることなく、栄冠を手にすることができる。
練習走行では1分37秒を切っていたという山野は、いつものようにワンアタックで37秒892をマーク。その時点で誰も37秒台に乗せられずにいたことから、いったんピットに戻って様子を見ることに。だが、大西が3周目のアタックで37秒764を記録し、逆転を許したこともあって、残り10分で再びコースに戻ることとなる。いったん熱を加えたタイヤはピークを過ぎていたものの、何とかタイムアップを果たした山野ながら、記録した37秒769はなんとコンマ005秒及ばず! 大西が初めてのポールポジションを奪い、必死の抵抗を見せた。
「1周ミスなく完璧に走れたんですが、まさか一番を獲れるとは。山野さんが調子を崩していたのか、僕の実力というより、ラッキーで獲れました」と大西。これに対して、山野は「ずっと中古タイヤで練習していたせいか、新品を入れたら自分のフィーリングに合わなかったというか。でも、勝てばもう決まりなので、得意のスタートで逆転します」と、まだ王座獲得を諦めていないよう。
3番手は「これ以上ない走りができました。ミスもなく、スリップも使えましたし」と語る、近藤翼(マナチュラKOTA-R BRZ)が獲得。ダンロップ勢としても最上位に。これに第4戦のウイナー蒲生尚弥(ケンダタイヤ86)が続き、5番手には佐々木孝太(CARトップ& XACAR BRZ)が。谷口信輝や織戸学がD1グランプリ出場で欠場する中、初レースながらプロの意地を見せることとなった。また、6番手にも初登場の佐藤晋也(OTG YOKOHAMA 86)がつけていた。
さて、予選までは何とかドライコンディションを保ったものの、その後ぽつりぽつりと雨が降り始め、決勝レースのスタート進行の頃には、いったん止んでいたとはいえ、路面は完全なウエットコンディションに。微妙な条件ではあったものの、宣言どおりスタートを決めてトップで1コーナーに飛び込んでいったのは、やはり山野だった。そして、その後方では佐藤もスタートを決めて佐々木をかわすも、その直後に他車との接触があってクラッシュ。大きく順位を下げた。
1周目を終えると、トップの山野には近藤が食らいつき、やや間隔を置いて佐々木、大西、そして元嶋佑弥という順。しかし、近藤が山野についていけたのはこの周のみで、やがて佐々木らの接近を許すこととなる。3周目からは山野の独走態勢に。「孝太さんが絶対に後半迫ってくると思っていたので、前半は必死にプッシュしました」という山野。実際、4周目にチームメイトでもある近藤をかわしてからの佐々木は、徐々にトップとの差を詰めていく。
そして、中盤から激しさを増したのは近藤、大西、蒲生、そして富澤勝による3番手争いだ。それぞれ隙のない戦いを見せたのだが、決着は最終ラップのヘアピンでつき、その中で次第に順位を上げ続けていた富澤が先頭に。第1戦以来となる表彰台ゲットに成功した。
一時は6秒近くあった差を3秒を切るまでとしたが、佐々木はトップに及ばず2位に。「なんとか“賑やかし”はできたというか、面目は保てたけど、近藤と遊んでいるうちに差を広げられちゃいましたね」と苦笑い。逃げ切った山野は86/BRZ RACEの初代チャンピオンを獲得した。
「チャンピオンが決まって、まずはホッとしました。残り2戦、オートポリスともてぎも、もちろん出ます。有効5戦なので、特にオートポリスも勝てばもう誰にも破られない最高得点が記録に残るので、それを目標にしたいと思います」と山野は語った。