今季からスタートしたGAZOO Racing 86/BRZ Raceの第6戦は6日、オートポリスで決勝レースが行われ、初挑戦の平岡塾長(ワコーズ制動屋レイズ平岡塾86)が優勝を飾った。
すでにチャンピオンは山野直也(P.MU RACING 86)に決まっている、GAZOO Racing 86/BRZ Raceの第6戦は、オートポリスが舞台。プロをのぞけばほとんどのドライバーにレースどころか、走行の経験もないこともあり、早い者は水曜日からサーキット入りして練習を重ねていたとか。
ただし、木曜には走行枠がなく、金曜日ですら午前中に30分のセッションが2回のみ。よもや前回の十勝と2戦連続で自走しているドライバーはいないだろうが、引き続きポイント50%増だとはいえ、エントラントの負担を考えると、どうにも「手軽なレース」とは言い難いように思えるのだが……。
ともあれ、その本番が始まった土曜日のオートポリスは、スーパーGTの予選をキャンセルさせたほどの悪天候。86/BRZ Raceの予選もスケジュールが改められ、本来ならスーパーGTの予選が行われるはずだった時間の後に移された。
ここで主役の座を射止めたのは、谷口信輝(コウベコクピットアドバン86)だった。ピットロードに並んだ段階で、前に数台を置いていたが、1周を終えてストレートに戻ってくると、なんと先頭に。46台が一斉に、しかもウェットコンディションで走る状況の中、ひとりクリアラップを取り続けて記録した2分24秒743は、残り5分の段階で2番手の織戸学(TR with COLLAR 86)を2秒、3番手の山野をも3秒上回った。
その直後、コース上にスポンジバリアが飛び出し赤旗が。わずか5分間とはいえ中断されていた間に天候は急激に回復。谷口はタイヤのコンディションを整えるのみの走行としたが、ライバルたちはラストアタックにすべてを賭けて、山野が25秒184、蒲生尚弥(ケンダタイヤ86)が25秒461と、谷口のタイムを上回ることはできなかったが、接近には成功する。この他にも平岡塾長(ワコーズ制動屋レイズ平岡塾86)と富澤勝(N1 TechポテンザWIN 86)が、織戸の前に割って入った。
「先頭で戻って来られて、クリアで走り続けられたのが大きいと思う。直也にばっかり勝たれて面白くないから、絶対にやっつけるよ。(決勝は)雨でもかまわないし、むしろ雨の方がいい」と語るのは谷口。一方、山野は「この台数だと、走る位置で全然順位が違ってきちゃうんで……。毎周引っかかりまくりで、最後も2回引っかかりました。それでもフロントロウだし、決勝では得意のスタート決めて、今回も勝ちますよ」と語っていた。
明けて日曜日に行われた決勝では小雨が舞うも、ワイパーを動かすか動かさないかの状況で、路面はむしろドライに相当していた様子。ヨコハマユーザーで初のポールシッターとなった谷口ながら、そのコンディションは山野らブリヂストンユーザーに有利なのは明らか。公言どおり山野がスタートを決めて後続を引き離していく一方で、2番手争いは大激戦。谷口がその先頭を走れたのはわずか1周だけで、2周目のストレートで蒲生に、そして第2ヘアピンで平岡にもかわされてしまう。勢いに乗る平岡は、次の周には2番手に浮上する。
その間に2秒のマージンを築いた山野ながら、広がり続けるどころか時に平岡のペースが上回る。「ワンミスでもあれば分からない」と思っていた矢先の山野に、アクシデントが発生。「ミッションブロー。5速でスティックしてしまい、他のギヤに入れようとしたけど、もう動かなくなっていた」と山野。リタイアを余儀なくされ、有効ポイント満点の野望は潰える。代わってトップに立った平岡は、蒲生を一歩も寄せつけずに優勝を飾る。
その後方では、激しく3番手が競われていた。織戸、富澤に続いていたのは元嶋佑弥(KOTA-R R-S BRZ)。予選こそ18番手だったが、かつてFCJを戦い、昨年は故郷に戻ってオートポリスのスーパーFJでチャンピオンを獲得したドライバーが激しい追い上げで、ゴール前は織戸に並んだが、あと一歩及ばなかった。
「トップに立った時というか、山野選手が止まった時は『あれ、レース終わったのかな?』と思いました。まさかの1位なんで、こっちがビックリしています」と語る、86/BRZ Race初参戦で優勝を飾った平岡は四国在住で、全国的には無名の存在。だが、ヴィッツレースでは関西シリーズで二度のチャンピオン経験を持ち、昨年はグランドファイナルでウイナーに。FRもオートポリスのロードスターカップを経験している、知る人ぞ知る存在でもある。「プロでなければ勝てない」という風潮に、一石を投じることともなった。