シンガポールGP翌日の月曜日、イギリスの3紙がそろって「バトン、鈴鹿で引退発表」というスクープ記事を掲載した。タイムズ、デイリー・テレグラフ、デイリー・メールの3紙は、くしくもイタリアGP翌日に「マクラーレン、ホンダ社長へ新井総責任者の交代を要求」のスクープ記事を書いた新聞である。

 イギリスのチーム、特にマクラーレンとイギリスの新聞メディアとのつながりは深く、イギリスでもオートスポーツ誌など雑誌やフリーランス記者は日本人、フランス人、ドイツ人、イタリア人と一緒のグループの「インターナショナル」枠の会見に参加しなければならないが、イギリスの新聞記者だけは「イギリス新聞」枠で独自の会見を開いてもらうことになっている。しかもレース後、マクラーレンは「インターナショナル」枠のドライバーの会見を行わないが、「イギリス新聞」枠だけ、レース後も会見が設けられている。そこでバトンが何を口をしたのか、すべてはわからないが、スクープとして報じるだけの確信を得たことは間違いない。

 実は、筆者もシンガポールGPの金曜日にスペイン人記者、フランス人記者とともにバトンのグループインタビューに参加する機会を得た。そのテーブルで、バトンの発言には「おや?」と思わせるものがいくつかあった。

──来年もF1を続ける気持ちに変わりはないですか。
「F1をドライブするのは、何物にも代えがたい特別なものだけど、この歳になると、ただF1に乗っているだけでは、もう満足感は得られない。 やっぱり前の方を走ってバトルしたい。達成感が得られなければ、ここにいる意味はない」

──でも来年、上位とバトルできる保証はありません。
「そうだね。来年がどうなるかなんて、だれにもわからない。だから、それは自分で決めるしかない」

──いつごろ決断するのでしょうか。
「2〜3週間以内には決めるよ」

──引退するというのは本当ですか。
「その質問には答えられない。でも、昨年とはまったく違う決断になるだろう」

 イギリスの新聞が、鈴鹿での引退発表を報道した根拠になっているものが、もうひとつある。マクラーレンとバトンとの契約だ。彼らによれば、バトンの契約は1年プラス1年オプションで、オプションはチーム側が持っており、その期限がロシアGP前後だという。もしマクラーレンがオプションを行使しなければ、バトンのマネージャーであるリチャード・ゴダードは常々「ジェンソンは下位チームに行くくらいならF1から引退する」と語っている。どうせ引退するなら、チームから事実上の「クビ」を宣告される前に、自ら潔く引退したいのではないか、というのが「鈴鹿での引退発表」報道につながったのではないだろうか。

 まだFIAから木曜会見に出席するドライバーの発表はされていないが、もしバトンが出席する場合、その場でなんらかの発表が行われる可能性もある。

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