アメリカGPの金曜、太陽が西の空に沈み始めた午後7時になっても、ガレージで作業が進められないチームがあった。そのチームの関係者に理由を尋ねると、驚くべき答えが返ってきた。
「必要な部品が届かないので、ギヤボックスが組み上げられないんだ」
なぜ、必要な部品が届かないのか? そのチームのオーナーが、きちんとお金を支払っていないからである。
ケータハムとマルシャが欠場したアメリカGP。理由は財政破綻である。負債総額が約20億円とも言われているケータハムは、ブレーキディスク代も満足に支払うことができずブレンボからの供給を止められ、シーズン途中からはカーボンインダストリー製のブレーキディスクを使用していた。しかも、通常ブレーキディスクは予選前に交換して新品を使用するのだが、最後の数戦はそれすらできず、小林可夢偉は「ブレーキのフィーリングが毎回違っていて大変」と語っていたほどだった。
ところが、そういう状況はケータハムだけの話ではなかった。というのも、その話をアメリカGPで、あるチーム関係者に尋ねると「ウチも同じような状況だ」と明かしてくれたからだ。その関係者によると「ザウバーはいつチームがなくなっても不思議ではなく、フォース・インディアとロータスも、かなり危ない状況」だという。
金曜日のFIA会見には苦境が噂されている3チームの代表が出席。年間で使用できる予算額に制限を加える「コストキャップ制」の導入をあらためて訴えていた。しかし、同席していたメルセデスのトト・ウォルフ(エグゼクティブディレクター/ビジネス)とマクラーレンのエリック・ブーリエ(レーシングディレクター)は「予算を今より低く抑えれば、我々のチームスタッフを解雇しなければならなくなるということを忘れないでほしい」とコストキャップ肯定論に釘を刺した。解決策を見出せない日々は現在も続いている。