現在F1界で注目を集めているドライバーは、バーレーンGPで1位と2位に入ったルイス・ハミルトンとキミ・ライコネンである。ふたりとも現チームとの契約が2015年限りで切れるからだ。ハミルトンもライコネンもチャンピオン経験者で、今シーズンの調子も悪くないだけに契約の更新は間違いなさそうに見えるが、事は簡単ではない。
まずハミルトンは、契約金の高さがネックとなっている。ハミルトンが2012年の9月に、2013年からの3年契約をメルセデスと締結した際の契約金は約77億円と言われている。メルセデス加入後2年目にチームへチャンピオンをもたらしたハミルトンが、3年間で100億円を要求したとしても不思議はない。
昨年の夏、ニコ・ロズベルグがメルセデスと契約を更改した際の契約金は3年間で約75億円と推測されている。あるドイツ人ジャーナリストによれば「ルイスは9000万ユーロ(約120億円)を要求している」ようだ。
これが本当なら、メルセデスはふたりのドライバーに約200億円もの契約金を支払うことになる。もちろん、これは3年契約の金額だから1年あたり60〜70億円となり、メルセデスが今年受け取る予定となっているFOMからの分配金、約120億円でまかなうことはできる。ただしチームにはドライバーのギャラ以外に開発費や人件費が必要なので、それほど予算に余裕はない。
もうひとつ、契約がなかなかまとまらない理由がある。それはハミルトンが今年からマネージャーを雇わずに自ら交渉していることだ。原則マネージャーがグランプリ期間中に契約の交渉を行ったとしても、その内容はドライバーには伝えない。ドライバーはレースに集中したいからだ。つまり、マネージャーがいないハミルトンとの交渉をメルセデス側(エグゼクティブディレクターのトト・ウォルフが担当)はグランプリ期間中に行っていないものと考えられる。フライアウェイだった開幕からの4戦は移動時間も長く、ヨーロッパで交渉する時間はほとんどない。さらに中国とバーレーンは連続開催だった。つまりバーレーンGP後からスペインGPまでの3週間が、新たな契約を結ぶため、両者にとって今季最初で最大のチャンスとなるはずだ。
だが、ここに来てフェラーリのマウリツィオ・アリバベーネ代表が意味深な発言をしているため、ハミルトンの契約更改はもう少し先になるのではないかという声もある。フェラーリ側の発言とは「ドライバーは誰でもいつかはフェラーリに乗りたいと思うもの。だから我々は常にドアをオープンにしている」というものだ。しかも、これは「ハミルトンと契約するつもりはあるか?」という質問に対する答えだった。
イタリアのジャーナリストは「フェラーリがハミルトンに100億円以上を支払うことはない。それができるのはメルセデスだけ。おそらく、ハミルトン側がメルセデスとの交渉を有利に進めるためのブラフだろう」と予想している。また「アリバベーネはライコネンとの契約を希望しているが、おそらくオブションが切れる夏ごろまで引っ張るつもりではないか」とも語った。
ドライバーのシートはトップチームから埋まっていく。現在コンストラクターズ選手権でトップ2に位置するメルセデスとフェラーリが、ストーブリーグならぬプールリーグもリードしていくことは間違いない。