バーレーンGP直前、フォーミュラ・ワン・マネージメント(FOM)が、人権団体の「ADHRB」と共同で声明を出した。「ADHRB」とは、「Americans for Democracy & Human Rights in Bahrain」の略で、バーレーンにおける民主主義と人権を考えるアメリカ人の団体である。声明では「グローバルな活動において、国際的に認められた人権を尊重することを約束する」と記されている。
バーレーンは「アラブの春」が起きた2011年に民主化を求める運動が活発になり、一度グランプリが休止に追い込まれたが、翌年復活。以来、4年連続で開催されてきた。
しかし、バーレーン政府に対する抗議活動はいまだに続いており、それに対する不当な圧力も続行されている。そのためバーレーンの首都マナマから約30km離れたバーレーン・インターナショナル・サーキットまで続く高速道路は、バーレーンGP期間中は毎年数百メートル間隔で警察の車両が待機し、抗議者からの妨害活動に備えているという状況下で開催されているのが現状だ。
こうした状況を、いつまでもF1が無視しているわけにはいかなくなった。実は、FOM代表を務めるバーニー・エクレストンは、これまでも何度か反政府活動の代表と面会している。一般に、エクレストンは政府寄りで、反政府勢力を敵にしていると思われているようだが、そう簡単な話でないことは、この事実が如実に物語っている。
「反体制派の人々とは、すでにロンドンでも会って話をしているし、バーレーンでも会っている。彼らと話をすると、彼らは非常に常識のある地に足の着いた人たちだということがわかる。だからこそ、どちらが正しくて、どちらが間違っているか、わからなくなることもある。もしかしたら、どちらも間違っているかもしれない、とね」
この4年間バーレーンGPを開催し続けてきたエクレストンだが、バーレーンの人権問題を無視していたわけではない。そして今年ついに人権団体と手を結ぶ決断を下したのである。
かつて、エクレストンはこう言っていた。
「我々の仕事は良いレースを披露することだけ。レースが終われば、静かに去る。我々の理解が及ばない各国の問題について、自分たちが関与するつもりはない」
つまり今回の人権団体との共同声明は、F1にとって大きな方向転換だと言っていい。しかも、これはバーレーンGPだけの問題ではない。声明では「グローバルな活動」と明記されており、F1が開催されるすべての国、つまり中国やロシアについてもF1は同じスタンスをとることになる。
人権問題はバーレーンだけに存在しているわけではなく、多くの国が抱えている複雑な問題であり、日本においても他人事ではない。だからといって、ヨーロッパから世界へ進出しているF1が、それぞれの国で起きている問題に目をつぶっていいというわけではない。その問題に対して、ようやく新しい流れが生まれようとしている。
