ロシアGP決勝前に行われたGP2第9戦ソチの決勝レース2では、クラッシュと赤旗中断によって大幅に短縮となったレース1の消化不良を晴らすかのように、ドライバーたちが積極果敢なバトルを見せた。
リバースグリッドでポールポジションについたのはアーサー・ピックだったが、スタートで好加速を見せたリッチー・スタンアウェイがあっという間に首位を奪い去り、ターン2で反撃を試みたピックは出口のソーセージ縁石に乗ってマシンが跳ねてしまい、後続のリオ・ハリアントに2位を奪われてしまった。
レース1でも派手なクラッシュが起きたターン2では、再び同じような混乱が発生。ほぼ全車がミディアムタイヤでスタートするなか、唯一ソフトタイヤを履くギャンブルに出た地元ロシアのセルゲイ・シロトキンがターン2にオーバースピードで突っ込んでしまい、ディーン・ストーンマンに追突してフロントウイングを失っう。ストーンマンはたまらずスピンを喫し、その混乱で後続のレネ・ビンダーとマーロン・ストッキンガーが絡み合ってコース上にストップ。これで、またしてもセーフティカーが導入されることになった。
この時点の順位は4番手ピエール・ガスリー、ラファエル・マルチェッロ、ストフェル・バンドーン、アレクサンダー・ロッシ。10番グリッドからスタートした松下信治は目の前で起きたスピンを切り抜け、10番手をキープしていた。
3周目にレースが再開されると、3番手ピックのペースが上がらず、後続は大渋滞となる。5周目のターン2でガスリーがピックを捕えたかと思われたが、出口のソーセージに乗って、マルチェッロとバンドーンに抜かれてしまった。防戦一方のピックは8周目のターン2でマルチェッロの先行を許し、続く5コーナーから7コーナーの攻防でバンドーンにも順位を明け渡す。
4番手に上がったバンドーンはファステストを記録して、マルチェッロを攻め立てると同時に後続を引き離し、ピックに抑えられたままのガスリーの後ろで走るロッシが焦れる。14周目にピックがターン13のブレーキングでオーバーシュートしたことで、ようやく前が開けたが時すでに遅し。首位スタンアウェイは大きく先行し、ハリアントからバンドーンまでの2位争いにも離され、後方からは5周目にアンドレ・ネグラオ、15周目にジョニー・チェコットをパスして7番手まで上がってきた松下に追い立てられる。バンドーンのタイトルを阻むためには前に出るしかないロッシにとっては苦しい展開となった。
「特に後半のペースは1番か2番目くらいに速かったんですけど、前が遅くて抑え込まれて、なかなか自分のペースで走れませんでした。最終コーナーで(前のクルマの)背後につくとダウンフォースが抜けてしまって、肝心のストレートで追いつけなかった。ロッシは特にペースが遅かったし、抜けるかなと思ったんですけど……」と松下は振り返る。
18周目にマルチェッロがターン13でロックアップするが、19周目のターン2でマルチェッロに仕掛けたバンドーンは続く3コーナーの後半で、ややワイドにふくらんでバランスを崩す。2位争いと6位争いが白熱するところ、20周目のターン3でタイヤかすに乗ったジョニー・チェコットJr.がスピンしてアウト側のバリアにクラッシュ。これで再びセーフティカー導入となり、そのままチェッカーフラッグが振られる結末となった。
スタンアウェイがモナコのレース2以来の勝利を飾り、ハリアント、マルチェッロが表彰台。バンドーンは4位でフィニッシュし、ランキング2位のロッシが6位に終わったため、2015年のドライバーズチャンピオンが決まった。
チームメイトの松下も一緒に、バンドーンの2015年チャンピオンTシャツを着てタイトルを祝った。松下は「ストフェルはタイトルが決まって、次のバーレーンではガンガンくるでしょうけど、僕も経験のあるサーキットなので、予選からトップを狙って優勝したい」と、残る2ラウンドに向けて決意を新たにしている。